このままではジリ貧。郊外ショッピングセンター内のアパレルに生き残り策はあるか?

 

4.アフターコロナの方向性は?

ビジネス環境は激変した。アパレルビジネスも根本から見直しが必要だ。その方向性について、いくつか示唆したい。まず、薄利多売の安売り商法を見直すことだ。単価を上げて、数量を減らす。これが真の意味でのサスティナブルなビジネスである。安い人件費を求めて、次々と生産拠点を変えるのはサスティナブルではない。

この30年間、アパレル企業はいかに安く生産し、安く販売するかを追求してきた。今後はいかに高い価格の商品を販売するか。高くても顧客が満足するか。商品以外の環境やサービスも含めて高くても納得できる商品とサービスを提供しなければならない。

次に、店舗数を絞り、在庫数を減らし、商品を売り切る体制を組むことが求められる。オーダーメイド、カスタムメイド、刺繍やプリントの後加工、ハンドクラフトのオプション等、工場から納品された商品を店頭にそのまま並べるだけではなく、更なる加工を行うのも良いだろう。

また、アパレル製品を販売するだけでなく、魅力的で映える写真を撮るところまでをサービスとして考えたい。更には、その画像を編集し、共有するメディアの整備も必要になる。

不要になった商品を買い取り、リメイクし、再販するサービスもサスティナブルである。

メタバースが普及すれば、リアルなスタイリングだけでなく、アバターのスタイリングも必要になる。購入したリアルな商品をデータとしても提供できれば面白い。

オーダーメイドやカスタムメイドに取り組むならば、サイズの管理が重要になる。変化する3D体型データの計測をフィッティングルームでできないだろうか。

中国を軸としたグローバリズムが崩壊すると、人々はローカルなコンセプトを求めるだろう。店頭販売からネット販売へと比重が移れば、東京や大阪の大都市発のブランドではなく、地方文化やアイデンティティをコンセプトにした地域発のローカルブランドも面白い。

いずれにしても、規格化された商品を規格化された店舗にマニュアル通りに陳列し、マニュアル通りの接客をしているだけでは、顧客を店頭に呼び戻すことはできない。商品の購入だけなら、ネットで十分なのだから。

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■編集後記「締めの都々逸」

「変化してたら 変化がおきて 更に変化が見えている」

リクエストにお答えして、郊外SC立地のアパレルショップについて考えました。本文では触れませんでしたが、コロナ以前、米国や中国で廃墟化したSCがいくつもありました。つまり、アパレルがどうなるか、以前にSCモールも危機なのです。

但し、日本では店舗流通が発達しているために、ネット通販に依存しなければ買い物ができないという人は比較的少ないはずです。コロナ以前は、ネット通販の商品と店舗販売の商品は棲み分けていたと言えます。しかし、コロナでその際が崩壊しようとしています。

また、リアルな店舗運営とネットビジネスのノウハウは全く異なります。その意味では、モノ作りが得意なアパレル企業と、ネット通販が得意な企業が連携して販売するという方向もあると思います。

いずれにしても、世界中が変化しているので、想像もしなかった事態が生じる可能性が大です。やはり、国内をメインとした地産地消のビジネスで生きていける方法を考えるべきではないかと考える次第です。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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