このままではジリ貧。郊外ショッピングセンター内のアパレルに生き残り策はあるか?

 

2.サプライチェーンの変化

特定のビジネス環境で最適化した最終形態のショップは、環境が変化すれば最適化できなくなる。まず、コロナ禍と戦争によって商品のサプライチェーンが変化した。日本のアパレル製品の7割程度は中国生産だ。

中国生産はゼロコロナ政策によって大きな痛手を受けている。ロックダウンにより、工場は稼動できないし、物流も止まった。ようやく動き出しても、いつ再びロックダウンが始まるか分からない。外資企業は次々と中国から撤退している。

また、西側諸国はウイグル人の人権弾圧に対抗する手段として、新疆綿の使用制限を行っている。日本では海外展開をしているユニクロ、無印良品だけが批判の矢面に立たされているが、実はほぼ全てのアパレルブランドが新疆綿を使っている。現在のところ、日本国内では新疆綿製品のボイコットは起きていないが、不安材料ではある。

円安の問題も深刻だ。最早、中国生産が安いとは言えない状況である。といって、国内生産ではこれまでの価格を維持できないし、そもそも生産スペースが足りない状況だ。

加えて、原材料の価格も暴騰している。糸、生地、付属だけでなく、ダンボールやビニール袋等も全て値上がりしている。このままいけば、次第に安価な商品を大量販売するというビジネスモデルが崩壊していくだろう。

そもそもアパレル企業がSCに大量出店するのは、薄利多売を目指したからだ。生産数量を増やすことで商品のコストダウンを図り、大量生産大量販売することで市場シェアを確保していく。しかし、サプライチェーンの変化により、商品を確保すること自体が困難になってしまった。勿論、工賃や生地値を値切るのも難しくなる。仕入れ先なんていくらでもある、という常識も変わっていくだろう。今後は、工場が小売店を選ぶようになるかもしれない。

3.ファッションに対する意識の変化

更に、アパレル製品に対する消費者意識も変化している。コロナ禍で自粛していた期間が長かったため、消費者はファッションの熱から冷め、冷静さを取り戻している。そして、家の中の不要な商品が目につき断捨離した人も多かった。無駄なモノを捨てて、シンプルな生活を志向する人が増えたのだ。こうなると、量より質が重要になり、安ければ売れるというセオリーも崩れる。

また、季節の切り替えと共に新しい服を買うという習慣も薄れている。ある意味で、シーズン毎に新しい服を買うという行為は惰性だったのだ。

コロナ以前は主に店頭で購入していた消費者も、自粛期間中はネット購入を試した。アマゾンの売上は市場最高を記録している。

アパレル製品に対する意識、アパレル製品を購入する方法、アパレル製品に求める価値等々の全てが2年間で変化してしまった。最早、コロナ以前のアパレルビジネスに戻ることはあり得ない。コロナ以前と同じ商品と同じ売り方をしている限り、ジリ貧になるだろう。

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