「一帯一路構想」の元、インフラ整備などを支援し、アフリカへの影響力を強める中国。テレビ網まで支配され始めた国もあり、債務の罠や思想の支配といった流れに抵抗する人も現れているようです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんは、読者からの質問を受け、米中によるグローバルエコノミーの分断についてコメント。ブロックチェーン技術を用いた暗号通貨やDAO(分散型自律組織)については、アフリカの小国にとって利用価値は高いものの、中国共産党のやり方と「透明性」の相性の悪さを指摘しています。
質問コーナー:DAOによる自治組織が立ち上がる流れは、近い将来アフリカなど中国支配が進む国で起きてくるのか?
Question
先日、The Economistによる「中国政府のアフリカ支配」に関する動画を観ました。
● China in Africa: should the West be worried? | The Economist
中国がアフリカ各国のテレビ網まで支配してきているようです。借金、資源、思想の支配に、地元でも状況を変えようと立ち上がる人がいると伝えています。
国とまではいかなくても、DAO(Decentralized Autonomous Organization、「分散型自律組織」の略。ブロックチェーン上で世界中の人々が協力して管理・運営される組織のこと)による自治組織が立ち上がる流れは、近い将来アフリカなど中国支配が進む国で起きてくるでしょうか?
香港もそうですが、上層部が賄賂などで繋がっている、軍事的脅威がある、ネットまで監視される場合、単純には難しいとも想像でき、DAOの思想と矛盾するかもしれませんが、立ち上がりには西側政府の牽制が必要かなと思っています。
ただ、その支援はいずれ西側諸国にもDAOによる自治組織が立ち上がる流れを作るようであり、彼ら政治家の利益と相反する気がしています。
中島さんからの回答
動画の紹介、ありがとうございます。中国が(米国に代わる)世界のリーダーになる準備を着々と進めていることが良く分かるビデオです。私は、米国の対中戦略に関わる人たちと何度か会ったことがありましたが、かなり本気で、中国の影響力を懸念しています。
Huaweiの米国市場からの締め出しは、最初の一歩でしかなく、米国は本気で中国に依存しないサプライチェーンの構築に投資してくると思います。その行き着く先が、二つの分断されたグローバル・エコノミーだとすると、それは世界の平和にとっては決して良いことではないと思います。
DAOは、暗号通貨と同じく、中国共産党の中央集権的なやり方と相性が悪いので、排除の方向に動くだろうと思います。デジタル人民元が米ドルに代わる基軸通貨として、中国の「一帯一路構想」の要の役割を果たすことは明らかで、暗号通貨は邪魔以外の何者でもないのです。
DAOは、究極的な透明性が特徴で、これも共産党の独占体制とは相反する動きなので、中国政府にとって良いことはありません。
しかし、アフリカの小国にとってみれば、暗号通貨を国の通貨として使い、DAOを使って賄賂や汚職を排除するというのはとても理にかなった戦略であり、私は応援したいと思います。しかし、そんな動きが出て来た時に、中国政府がどう対応するかを予想するのはとても難しいと思います。
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