金総書記が日本の朝鮮総連に宛てた異例の書簡。その内容とは?

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日本で行われた朝鮮総連に金正恩総書記が異例の書簡を送り、話題となっています。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』で、宮塚コリア研究所副代表の宮塚寿美子さんは、なぜ、その書簡の内容が異例なのか、今後どうやっていく可能性があるのかを記しています。

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金正恩氏が総連に対して異例の民団との連携を呼びかけ。民団の反応は?

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)は、2022年5月28日に東京で開催された在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)全体大会に合わせて書簡を送った。

金委員長は、在日本大韓民国民団(民団)などとの「民族団結事業」を強化するよう指示した。北朝鮮の最高指導者が民団に直接言及して朝鮮総連に連携を指示するのは極めて異例なことである。

これに対して、民団の呂健二(ヨ・ゴニ)中央本部団長は、2022年6月10日に以下のような談話文を発表した。

…前略…つまり、北韓のチュチェ思想のもとに民団を引き入れ、共同行動することによって、統一愛国勢力を拡大せよ、という指令である。

ここに本団の名が出てきたのは何故か。2006年に朝総連の考え方に近い人士により本団と朝総連を一体化しようとした「5.17事態」が起こった。同胞社会や日本社会から多くの批判が出て、阻止した経緯がある。昨年以来、嘘と誹謗中傷を繰り返し、本団に混乱をもたらした要因にも留意する必要がある。

本団は、朝総連が北韓の体制と思想に盲従することから早く脱却し、在日同胞のための真の民間組織として再生するよう再三望んできた。体制維持のために朝総連に対し絶対服従を強制するこの書簡が、朝総連の大会で《綱領的》に貫徹することが決議されたことは、時代錯誤も甚だしいものである…省略…。

とし、民団の各組織に「朝鮮総連の策動に扇動されてはならない」と呼び掛けた。

実際に消息筋によると、昨年の中央本部団長選挙に端を発した若手と古参との内紛が続いており、「民団がぐらついている間に朝鮮総連の勢力を広げよという指示ではないか」との見方がある。

このような背景もあり、金委員長は民団の内紛を利用し、分断化させ勢力拡大などの思惑が見え隠れする。

金委員長の「海外同胞」を巡る発言については、2018年6月12日に行われた米朝首脳会談で、金委員長はこの海外同胞について連呼したのが印象的である。ただ、その時は、朝鮮総連だけなのか、民団を含むのかはっきりはしなかった。この点から見ても、今回の金院長の民団への言及は異例である。このことは、北朝鮮の対日政策の変数にもなってくるだろう。

引き続き金委員長の書簡などの言及はもちろん、改めて朝鮮総連と民団の反応も合せて注視していく必要がある。

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宮塚コリア研究所副代表・國學院大學栃木短期大學兼任講師 宮塚寿美子

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