究極のムダ。日本の学校が「夏休み廃止」を決断すればすべて上手く回る訳

 

そもそも夏休みの必要性も疑問です。ただでさえ、教育に充てる時間数は限られています。そんな中で、英語にしても、情報にしても教育の内容は増えるばかりです。一方で、昔は自由に家で研究していればよかった教員には、夏休みにも出勤させて無駄な書類を作らせたり、(例えば運動会の計画書を下手くそな描画ソフトで書くだけの作業に何日も費やすとか)無駄な研修に引っ張り出したり馬鹿なことをやっています。

一方で、高校以上になると「まともな」学校に入るには入試に受からなくてはならず、そのためには公教育では足りずに塾に行かされます。この余計な出費が少子化の深刻な原因の一つになっているぐらいです。夏休みは学校がないので、塾がビジネスチャンスだとばかりに、夏期講習という下らない商品を売りつけて家計を苦しめています。だったら、この際ですから夏休みはやめるか短縮して、年間の授業時間数を増やすのです。

受験勉強も公教育で吸収すべきだし、そもそも夏休みに子供が家でゴロゴロしていては、両親が忙しい家庭では迷惑千万です。第一、先生は登校しているのですから、授業をやればいいのです。猛暑が懸念されるといっても、危険な地域にはエアコンの普及が進んでいるので、対策は可能です。夏休みなどやめて、子供に勉強させるべきです。

参院選目指して選挙運動をしている際に、某政党の候補が「三角関数など生活で使わないので、自由選択にしろ」などと馬鹿なことを言っていましたが、あれは「自分は三角関数に苦手意識を持っている人の票が欲しい」という「劣等感ポルノ」を店に並べているだけですから騙されてはいけません。

とにかく、日本の教育カリキュラムは「ゆとり以来の軟弱化が治っていない」プラス「エリート教育は文科省が放棄して、経産省管轄の塾に丸投げ」という異常な政策が進んでいます。夏休みを廃止して、時間数を増やし、子どもの教育を強化すれば、社会の競争力もアップするし、教員もブラックな報告書書きに疲弊するのではなくて、本来の授業で活躍できるし親も喜ぶし、効果抜群だと思います。

その際に困るのは塾ですが、塾講師の中でも優秀な人にはセカンドチャンスを与えて、教科指導強化を目的として特別教員として雇用すればいいのです。塾に関して言えば、最近、特に九州で多いのですが、一部のメディアが「朝特訓」という教員が早出して高校生に受験指導を行う習慣への批判が始まっています。

これも異様です。どう考えても塾産業のスパイとしか思えません。ダマされてはダメだと思います。塾に関して言えば、首都圏では中学受験のブームが続く中で、公立中学のレベル低下が続いています。これは由々しき事態であり、格差の再生産と、苦労を経験した人材の抜擢を不可能にして社会をダメにしていると思います。

そもそも巨額の税金が公立校の改善ではなく、私学助成に流れているというのは、巨大な腐敗マシーンが延々と半世紀以上回っているのと同じです。このマシーンには、エリート校が男女別学という江戸時代のような封建性も残っており、発達スピードは男女で違うなどという毒親のニーズにつけ込んで、結果的に「エリート階層の男尊女卑」を維持しているのです。首都圏の行き過ぎた中学受験と、エリート校の男女別学、そしてそこに巣食う塾利権、その全てをバッサリやる時期ではないかと思います。

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