さて、これに比べて台湾はどうでしょうか。
そもそも中国が台湾を併合しようとしていることはすでに見てきているように明らかです。
そのうえで、ロシアがヨーロッパ(ウクライナ)で世界の耳目を集めている間に、台湾を併合するというようなシナリオもありました。
実際には、今年の10月1日からの「国慶節」明けに、戦争を始めるということは十分にあり得る話であったのです。
いや、それどころか、3月初旬に閉幕したパラリンピックの後に、中国は台湾併合を行うことは可能であったと思います。
しかし、そのようにしなかったのです。
一つはウクライナの方が簡単であると思われたので、先にウクライナを手を受けたということになります。
ウクライナは、今でこそ人気の高いゼレンスキー大統領の国民支持率は20%前後まで下落し、ロシアの工作がかなりうまくいったというように考えられていたのです。
この事から、ロシアがウクライナに侵攻を始めれば、その工作が功を奏してウクライナ国民がこぞって親ロシア派になるのではないかと思っていたといわれています。
そうではないにせよ、ゼレンスキー大統領が国外に逃げて、亡命政府を作り、何らかのメッセージを発しても、ウクライナの国軍の士気は上がらず、そのことから、ウクライナはすぐに降伏すると思われたのです。
しかし、そうではなかったのです。
ゼレンスキー大統領はキエフにとどまり亡命政府のようなことはしませんでした。
そのことから、ウクライナの指揮は高まったのです。
しかし、同時に、ロシアが工作した内容は効果がなく、その効果が測定できないということになったのではないでしょうか。
当然に、中国は台湾の侵攻を止めざるをえません。
ロシアのウクライナ侵攻に関して、2月24日前後から3月待つくらいまでの間、中国人民解放軍は約30万の軍隊(情報によると陸海空合計)を海南島の三亜基地周辺におき、いつでも台湾侵攻ができるようにしていたといわれています。
また海軍は、ウラジオストクにあるロシア太平洋艦隊とオホーツク海で演習をしています。
現在、日本周辺における中国軍とロシア軍の動きはこの時に、人民解放軍が集結したことに由来しているといって過言ではありません。
しかし、中国人民解放軍は、そのようにしながらも、台湾の侵攻をしなかったのです。
つまり、自分たちの行っている工作がうまくいっていないということ、また、台湾に関してはアメリカ軍が支援する可能性があるということからです。
しかし、ウクライナに比べて台湾のほうが簡単であるという見方は間違っていません。
ウクライナの場合は陸続きの国家があるから、「亡命(避難)」ができます。
しかし、台湾の場合は周辺が海しかないので、亡命はできないということになるのです。
その時には船か飛行機しかないということになります。
しかし、それらは港がなければなりませんし、同時に「制空権」「制海権」が必要になるということになります。
戦争などは始まっていない現段階において、既に南シナ海(台湾海峡側)は中国が制圧しているといって過言ではありません。
習近平国家主席は、すでに「台湾海峡は国際海峡ではない」ということを言い、そこが中国の領海であるというような主張をしています。
そのような発言ができるようになるほど、既に制海権の支配は進んでいます。
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