日本の難民認定「1000人に3人」の衝撃。人権感覚ゼロで“厄介者扱い”の現実

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戦火のウクライナを脱出した難民たちを受け入れると表明した日本政府。これまでの難民に対する扱いを考えれば驚きの措置ですが、あくまで特例で、難民としての認定でもありません。日本の難民認定は2020年までの約40年間でわずか0.3%、1000人に3人しか認めていないのが現実です。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で評論家の佐高信さんは、作家の中島京子さんの小説『やさしい猫』に登場する弁護士の嘆きの言葉や、昨年名古屋入管で起こった痛ましい死亡事件などの例をあげ、「この国は難民に対する人権感覚が完全にゼロ」と厳しく非難しています。

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日本の難民認定は0.3%

社民党の福島みずほの後援会長をしていてトクになることはほとんどないが、先日の総決起集会で作家の中島京子と一緒になったのは幸いだった。彼女もトクになることはないだろうに、出て来てスピーチしてくれたのである。

それで私は『俳句界』の対談に登場してもらうように頼み、準備として彼女の新作『やさしい猫』(中央公論新社)を読んだ。難民問題がテーマの話題作である。

ウクライナからの難民を突然受け容れて、日本は最初から理解があるようなフリをしているが、遅れていること甚だしい。たとえばカナダでは難民認定率が67%だが、日本は0.3%である。作中で弁護士がこう語る。

「難民ですから、この国に居させてくださいっていう申請をする100人のうち、(カナダでは)67人が、いいですよって言ってもらえる」

ところが日本は1,000人が来たうちの3人となる。カナダは1,000人来たら670人である。それでも日本に難民申請を求める人は毎年1万人くらいいる。とすると認定されるのはおよそ30人。それに携わってきた弁護士が嘆く。

「日本では、現地の新聞に大きく顔写真付きで載ってる反政府運動のリーダーかなんかじゃないと、ほっとんど難民認定されない。しかも、そういう証拠を自分で集めて持ってきて提出しないと認められない」

また、入国管理局、通称・入管の扱いがとてつもなくひどい。その収容所に収容中の女性が病気になったのにろくに治療もさせないで死なせた事件は記憶に新しいだろう。

この国は国民に対しても人権感覚がないに等しいと思うが、難民に対しては完全にゼロで、厄介者扱いなのである。

チェスの世界チャンピオン、ボビー・フィッシャーが牛久の入管にいたことがある。1990年代にソ連(現ロシア)の王者スパイスキーを破ってアメリカの伝説的英雄となった彼はその後いなくなり、90年代になって突如出てきてユーゴスラビアでスパイスキーと再現試合をした。

アメリカがユーゴに対して経済制裁をしていた最中だったので、怒ったアメリカ政府は国籍を剥奪した。無国籍となった彼は、しかし、ある時期から日本とフィリピンを行ったり来たりする。その間のパスポートチェックがどうなっていたかはわからない。そして、2004年に成田空港で捕まってしまった。入管法違反容疑である。

アメリカは引き渡しを要求したが、ボビーは政治的迫害だと主張して日本で難民申請をする。しかし、却下された。スパイスキーは当時のアメリカ大統領のブッシュに手紙を書いた。

「もしフィッシャー氏が罪に問われるなら自分も同罪です、どうぞ私も刑務所に。そのときは彼と同房にして、チェス盤を差し入れてくださいね」。

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image by:Ruslan Lytvyn/Shutterstock.com

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