先進国では最下位。女性候補初の30%超も改善されない日本のジェンダーギャップ

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7月10日に投開票を迎える参院選には、過去最多を大きく上回る181人の女性が立候補をしました。全候補者545人に占める女性の割合は33.2%となり、3割を超えたのは初めて。こうした動きの背景にあるのは、男女格差の後進国とも揶揄されるジェンダーギャップです。渋沢栄一の子孫で、世界の金融の舞台で活躍する渋澤健さんは、公表されたジェンダーギャップ指数のデータを紐解きながら、日本の問題点を指摘していきます。

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

改善されない日本のジェンダーギャップ

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

世界経済フォーラムは2006年から各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を発表しています。最新の2021年に公表されたレポートによると日本の総合スコアは0.656で、156か国中120位というかなりの下位でした。この総合スコアは、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等で、1が完全平等を示しています。

ちなみに1位はアイスランド(同0.892)、2位はフィンランド(同0.861)、3位はノルウェー(同0.849)という北欧国でした。人口が少なく、人口密度も日本と異なり、社会、産業、文化の違いがあることが背景にあるかもしれません。

ただ確かに東アジアの総合スコアは低い傾向がありますが、102位の韓国(同0.687)、107位の中国(同0.652)と比べても日本の順位はかなり劣ります。日本の順位は119 位アンゴラ(0.657)と121位シエラレオネ(0.655)の間です。

日本と韓国の社会・文化は同じような男尊女卑的な傾向がありそうですが、当初の2006年に比べ現在の韓国の総合スコアは+0.016と若干改善。しかし日本は同期間で+0.003と改善がほぼ観測できません。

一方、上位のアイスランドの改善(同+0.111)は群を抜き、フィンランド(同+0.065)とノルウェー(同+0.050)も顕著に改善がみられます。(中国は同+0.006)

分類別に検証すると「経済」では、日本のスコアは0.604で117位であり、総合スコアとほぼ同水準です。安倍政権時代に女性活躍が政策方針として設けられ、多くの企業は管理職比率30%を目指す等の目標を掲げました。女性の社外取締役候補は引く手数多で、有望者が集中的に複数の企業の役員を務める事態になっています。こうした状況を背景に、2006年の「経済」スコアの0.545と比べると現在は+0.059改善しています。

しかし、2006年当時の日本の「経済」スコアのランキング83位でした。世界の「経済」分野におけるジェンダーギャップの改善の方が日本よりスピード感があったのです。ちなみに、韓国の「経済」スコアは、0.586の123位であり、2006年は0.481の96位なので、日本の方が勝ります。

しかし、スコアの改善ペースを比べると、このままでは日本が追い越されるのは時間の問題です。「経済」分野で1位は北欧国ではなく、ラオス(0.915)です。

一方、日本の「教育」の男女平等スコアは0.983であり、かなり優秀です。ただ、順位は92位に留まります。原因は「教育」スコアが1.00の国々が26か国もあるからです。米国、カナダ、フランスという先進国だけではなくアルゼンチン等も含まれます。英国(0.999)、ドイツ(0.997)、イタリア(0.997)と比べると、実はG7で日本は「教育」の分野で最下位です。

では、「健康」の分野はどうでしょうか。日本のスコアは0.973で65位です。1位のスコアは0.980ですが、ブラジル、ミャンマーなど新興国を含む29か国です。健康における男女不平等であり絶対的水準でないので、医療へのアクセスや平均寿命が日本より低い国であっても、ジェンダーギャップが生じていない国々が最上位に入っているのでしょう。

同じ先進国である米国(同0.970)87位や英国(同0.966)110位と比べると、やはり日本は絶対的な水準でも男女平等性においても健康大国であると誇れます。

このように、日本のジェンダーギャップは「経済」では改善が必要とされ、「教育」はまずまず、「健康」は優秀という実態が見えてきます。

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