軍産複合体の“手下”米バイデンがウクライナ戦争を引き起こした動かぬ証拠

 

旧東欧という兵器新市場に目が眩み

冷戦が終わると、統合参謀本部議長であり後にブッシュ子政権の国務長官になったコリン・パウウェルの率直な言葉によれば、「米国は敵に事欠きつつあった」(A・ファインスタイン『兵器ビジネス 下巻』原書房、15年刊)。当然のことながら米国の国防支出は大幅に削減され、米軍需産業は大掛かりな整理・再編を迫られた。その中でロッキードとマーチン・マリエッタの大型合併により95年に「ロッキード・マーチン(LM)社」が誕生し、以後、今日に至るまで同社はダントツの世界ナンバーワン兵器メーカーの座(写真1)を維持している。

この合併の立役者で合併後のCEOに就いたのは、ロッキード社出身のノーム・オーガスティンで、彼は後にブッシュ子から「国防長官になってくれないか」と言われたが断って、「貿易のための防衛政策諮問委員会(DPACT)」の委員長、「国防科学評議委員会」の委員長、「米国陸軍協会」の会長などとして、周りから政府と議会を操る方策を選んだ。

DPACTの目標は、米国とLM社の兵器輸出を倍増させることであったが、問題は、同社の高性能の武器を必要とする国は本当のところ存在せず、また仮に存在したとしてもその費用を賄える国が存在しないことだった。「敵に事欠く」のであれば嘘でもいいから敵を作らねばならず、相手国に金がなければ融通してやらなければならない。議会では超保守派のニュート・ギングリッチ下院議長が立ち働いて武器購入国に低利融資を提供する150億ドルの基金を創設することに成功したものの、「敵」を生むのは簡単ではない。

そこでオーガスティンが目を付けたのが旧東欧で、彼はロッキード時代の海外事業担当部長で合併後は戦略企画部長から副社長にまでなったブルース・ジャクソンを伴って東欧を歴訪し、たとえばNATO加盟を熱望していたルーマニアでは、「我が社の新レーダー・システムを導入するなら、ルーマニアのNATO加盟立候補を後押しするためワシントンで影響力を行使すると誓った」と、ファインスタインは前掲書で述べている。

想像するに、オーガスティンは「NATOに加盟しようとすれば、いずれ旧ソ連型の旧式兵器を捨てて西側諸国と互換性のあるシステムに入れ替えすることになる」と説得しただろう。ルーマニア側は「それはそうだが、そんなに高性能の兵器システムを揃える必要があるのかどうか」と躊躇ったに違いないが、米国の死の商人の代表は「いや、金のことは心配ない。それよりも、やっぱり西側諸国と肩を並べて訓練したり作戦行動をしたりするにはそれなりのものを持つことが重要だ。そうすることで初めてNATOの懐に抱かれて安心を得ることができるのでは?」と畳み掛けただろう。その際には旧ソ連の支配下での恐怖を思い起こさせたかもしれない。

兵器の売り込みの商売が先で、そのためのNATO拡大の外交方針が後を付いて行ったという順序であることがよく分かる。

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