安倍元首相の死で窮地に立つ岸田首相。難題ばかりで忍び寄る「反岸田」の足音

2022.07.19
 

2つ目のハードルは区割り

2つ目のハードルが衆議院選挙の「10増10減」に伴う選挙区の区割りである。

6月16日、衆議院の小選挙区をめぐる、いわゆる「1票の格差」を是正するため、政府の衆議院選挙区画確定審議会が、小選挙区の「10増10減」など合わせて25都道府県、140選挙区の区割り案を岸田総理大臣に勧告した。

政府は、これを受けて新たな区割り法案を国会に提出し、法律が成立すれば、周知期間を経て、次の衆議院選挙から新たな区割りが適用されることになる。

これがもめる。選挙区の見直しは、現職の衆議院議員の利害が激突する。言葉は悪いが、「泥棒が刑法をいじる」ようなもので、当事者が決める法案は、「何で俺の地盤の地域が別の選挙区になるんだ!」など、国会提出前の段階で紛糾するのが目に見えている。

小選挙区が10増え、10減るという単純なものではなく、140選挙区で区割りの線引きが行われる。小選挙区が増えたところには支部長を置く必要があり、区割りと支部長が決まらなければ、岸田首相は解散権すら行使できない。

選挙をつかさどるのは幹事長である。先に述べた人事にも重なる話だが、新たな区割りに合わせ候補者だけでなく支部長も決める重責を、茂木氏にやらせるのか別の人間を起用するのかも問われることになる。

また、9つも選挙区が増える関東をめぐっては、早くも公明党から自民党に対し、「うちに1つか2つ任せてほしい」との要望が来ているとも聞く。そうなると自民党幹事長にとっては、公明党との調整も難題になる。

支持率上昇の可能性がほとんどない岸田首相

ここまで直近のハードルを2つ挙げたが、新型コロナウイルスの変異株「BA.5」による感染急拡大、それに伴う全国旅行支援の延期、円安、秋の補正予算編成、そして年末に予定される戦略3文書(国家安全保障戦略、防衛の大綱、中期防衛力整備計画)の見直し、いずれをとっても、岸田首相の支持率を押し下げる要因になるものばかりだ。

岸田首相は、安倍氏という考え方が真逆でライバルの1993年当選組の同期を失くしたばかりでなく、自身への支持率も失いかねない嵐の中で船を漕ぎ続けることになる。

安倍元首相の葬儀が行われた増上寺での献花の列(撮影:清水克彦)

増上寺での献花の列(撮影:清水克彦)

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