安倍元首相の死で窮地に立つ岸田首相。難題ばかりで忍び寄る「反岸田」の足音

2022.07.19
 

バイデン大統領も漂流中

岸田首相以上に厳しい状況に追い込まれているのが、アメリカのバイデン大統領である。

食品や消費財、ガソリンや光熱費の価格上昇という空前のインフレを受けて、バイデン大統領の支持率は、今月、ついに40%を割り込んだ。

ニューヨークタイムズが7月12日に公表した世論調査では、64%が2024年の大統領選挙で「バイデン以外を望む」と回答している。

現在、79歳のバイデン大統領は、2024年の大統領選挙時点で81歳を迎えることになるが、年齢の問題以上に、インフレに有効な手立てがなく、対中戦略にも揺らぎが見えることが問題だ。

バイデン政権は、トランプ政権から継続している対中関税の見直しに言及し始めた。アメリカは現在、中国からの輸入品の6割以上に最大25%の関税を上乗せしている。これを撤廃すれば、物価の上昇を1%あまり抑制できる。

6月の物価上昇率が9.1%だったことを考えれば焼け石に水だが、11月には中間選挙を控え、背に腹は代えられないというのが本音であろう。

当然、民主党内からは、「中国への圧力を失う」との反対意見が上がっているが、すでにアメリカは、サリバン大統領補佐官やカート・キャンベルインド太平洋調整官が、中国外交トップの楊潔篪政治局委員と、そしてブリンケン国務長官が王毅外相とぞれぞれ会談し、対話路線に舵を切ったように見える。

近く、バイデン大統領と習近平総書記による米中首脳会談が電話かテレビ会議方式で開催されれば、しばらくは「撃ち方止め」の状態に入る可能性もある。

そのバイデン大統領は、安倍氏の死亡が確認された直後、声明を発表し、ワシントンの日本大使公邸を弔問した。さらに、バリ島でのG20外相会合に出席していたブリンケン国務長官を急遽、東京に派遣した。これを進言したのはバイデン大統領が絶大の信頼を寄せるエマニュエル駐日大使である。

これらの動きを見れば、アメリカの日本重視の姿勢に揺らぎは感じられないものの、バイデン政権の対中政策を支えてきたサリバン補佐官が夫人の下院選出馬で退任の意向を示したとの情報や、カート・キャンベル調整官も退任のうわさが消えないなど、バイデン政権そのものが揺らぎ始めていることが懸念される。

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著書紹介:ゼレンスキー勇気の言葉100
清水克彦 著/ワニブックス

清水克彦(しみず・かつひこ)プロフィール
政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師。愛媛県今治市生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得期退学。文化放送入社後、政治・外信記者。アメリカ留学後、キャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。現在は報道デスク兼解説委員のかたわら執筆、講演活動もこなす。著書はベストセラー『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)、『台湾有事』『安倍政権の罠』(ともに平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)、『人生、降りた方がことがいっぱいある』(青春出版社)、『40代あなたが今やるべきこと』(中経の文庫)、『ゼレンスキー勇気の言葉100』(ワニブックス)ほか多数。

image by: 岸田文雄 - Home | Facebookk

清水克彦

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