店舗から3Kをなくせ。サイゼリヤの新会社が飲食業界を激変させる

 

「厨房優先」の必要がなくなる

サイゼリヤの中で「厨房設備の3K」を改善することは2014年から取り組んできた。その奮闘してきた経緯をサイゼリヤのプロジェクト推進部課長の藤田宗彦氏が解説してくれた。

プロジェクト推進部ではグリストラップ清掃を改善するために、さまざまな実験を重ねて独自に機械の開発を試みた。しかしながら、グリストラップの世界には日本阻集器工業会という業界団体が存在し、そこでSHASE(シャセ)という規格が設けられている。これによってここから逸脱したグリストラップ機能をつくることができない。

東京都に問い合わせると「SHASEの規格に則ったもの使う」もしくは「SHASEの規格と同等の性能があると下水道局が認めたものを使う」という。

そこでこれを解決する技術が海外に存在するのではないかとGoogleで検索した。すると、それがイギリスに存在した。それは厨房機器からの排水から自動で油を回収する機械で床置き式になっている。そこで、複数あるこれらの機械の中から発火等のリスクのないEPAS社のグリスシールド(以下、GS)を日本建築総合試験所でテストすることになった。果たして、EPAS社のGSはこのテストをクリアした。

GSが床置き式になっていることの画期的なことは、上記の「飲食店の宿命」が解決されるということ。

まず、従来のグリストラップのように床上げをする必要がないので厨房の中にスロープがなくなり(ただし、防水層をつくるために5㎝程度の床上げが必要)、段差のある客席フロアと行き来する危険な労働から解放される。

厨房からグリストラップをなくすことで厨房を床上げする必要がなくフラットに近くなる(防水層をつくるために5㎝程度の床上げが必要)

厨房からグリストラップをなくすことで厨房を床上げする必要がなくフラットに近くなる(防水層をつくるために5㎝程度の床上げが必要)

次に、厨房機械からの排水はポンプアップしてGSに送り、さらにGSからポンプアップすることで最終的に排水口に排水する。

排水をポンプアップして天井を経由してグリスシールドにつないでいる

排水をポンプアップして天井を経由してグリスシールドにつないでいる

どこにでも送ることができるようになり、これによって、店舗の平面プランは厨房の場所から決定されるという縛りから解放される。つまり「厨房はどこにあっても構わない」ということだ。

従来の飲食店の平面プランは厨房の場所が優先されたが、グリストラップがなくなることで快適なデザインを優先させて最後に厨房の場所を決めることができる

従来の飲食店の平面プランは厨房の場所が優先されたが、グリストラップがなくなることで快適なデザインを優先させて最後に厨房の場所を決めることができる

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