店舗から3Kをなくせ。サイゼリヤの新会社が飲食業界を激変させる

 

厨房を3Kにしていた飲食業の宿命

では、厨房に3Kをもたらしていた「グリストラップ清掃」と「厨房スロープ」はなぜ存在していたのか。それはこれまで「飲食店の宿命」であった。

飲食店の宿命①

業務用の厨房には、「油脂分離阻集器」であるグリストラップ(Grease Trap)の設置が義務付けられている(建設省工事第1597号)。厨房から出る排水に含まれる油やゴミ(野菜くずや残飯など)を直接下水道に流してしまうと自然環境への悪影響が考えられ、それを防止するために考えられたのが「グリス(油脂)トラップ(せき止め)」だ。

グリストラップは一般的に三層構造になっている。

1層目は、バスケットで大きな生ゴミを回収する。
2層目は、油分と水分を分離する(油分が浮き、残渣が沈む)。
3層目は、油分がない汚水を流出する。

①の問題点

グリストラップにこびりついた油や残渣を清掃するために掃除をしなければいけない。汚水の臭いと、頑固な汚れと闘うことになる。アルバイトはこの作業を回避しがちで、強要すると離職につながりかねない。

これがグリスシールド。床置き式で店舗が撤退する場合はこれを外して他の店で活用することができる

これがグリスシールド。床置き式で店舗が撤退する場合はこれを外して他の店で活用することができる

飲食店の宿命②

飲食店の厨房は、このグリストラップの設置が最優先される。まず、下水道へつながる排水口が存在し、その至近距離にグリストラップを設置する。排水する厨房機器はグリストラップの至近距離に設置されることになる。こうして店舗の平面プランは、まず厨房の場所が決定され、その後に客席などが描かれていく。

②の問題点

店舗の平面プランが排水口の場所で決定されることから、機能性やデザインを優先した平面プランを描くことができない。

飲食店の宿命③

厨房機器からグリストラップを経由して排水口まで廃水をスムーズに流していくためには傾斜が必要となる。傾斜をつくるための一番高いところは本来の床から40㎝程度の高さが必要。そこで厨房の床は本来の床から40㎝程度高いところにつくられる。これを「床上げ」という。

厨房が床上げされているために、厨房は客席フロアより40㎝高くなっていて、客席フロアから厨房に入るためにスロープが設けられている。

③の問題点

厨房に床上げが必要なために天井高が低い物件では出店ができない。また、スロープとはいえ40㎝の段差を行き来するのは重労働で転倒するなどの危険性がある。

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