日本人が知らない、中国と台湾の関係をあらわす「統戦」と「前線」

 

もう一つのキーボードの「統戦」は統一戦線の略語である。共産党政権がよく使う独特な言葉である。例えば中国における「国共合作」(「抗日民族統一戦線」)。中国ネット上の統一戦線について、以下の通りの説明があった。

「広義の統一戦線は、一定の共通目標のために、異なる社会的・政治的勢力が政治的に同盟・連合することを指し、狭義には、プロレタリアートとその党の戦略、主としてプロレタリアート自身の統一と同盟の問題を指している。統一戦線は、中国の革命、建設、改革のすべての時期において、中国共産党の主要な戦略であった」。

勿論、台湾はずっと中国の統一戦線の対象である。しかし、「統戦」のカタチもいろいろある。昔は大陸と台湾、互いにラジオを使って、自らの政策を宣伝していた。「福建前線広播電台」というラジオ局もあった。放送した内容を聞けば、両者の敵対関係が明らかになっていたとわかった。

それ以外に、面白い宣伝方法もあった。海辺に住んでいる知人が、台湾の金門からの大型風船を拾ったことがある。風船の中に、なんと、三民主義のチラシとビスケットがあった。知人が大喜び、それからずっと台湾の風船を待っているという。大陸から台湾金門に送った風船もあった。中身はなんだろうか、知らなかった。共産主義のチラシがあったのだろう。

小さい頃、当方はこっそりと台湾のラジオを聞いていた。バラエティー番組みたい。女性キャスターの風格は笑顔がなく態度が謹厳である中国のキャスターと全然違って、楽しそうに気軽に日常茶飯事とエンタメのことをしゃべる。番組の中で、よく笑ったりしていた。とても親近感を覚えた。当方は台湾に憧れを持つようになった。今思えば、優しさと柔軟さは一番いい「統戦」だろう。

不思議なことに、30年経っても、あのキャスターはまだ同じ番組のキャスターを務めている。偶然にも、数年前、当方はその方とフェイスブックで連絡を取る機会があった。

台湾と福建、今もお互いに風船を送ればいいと思う。アメリカの政治家が台湾を訪問する一方で、大陸は台湾をミサイルで囲み、台湾の農産物輸入を制限し始め、実際に被害を受けるのは台湾海峡の両岸の民衆である。

「前線」になったせいで、福建省の経済発展は上海、広東など地域よりずいぶん遅かった。近年やっと経済が進んできた。故郷が「前線」に戻らないように祈念せずにいられない。

(『黄文葦の日中楽話』2022年8月15日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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