3.高齢者雇用を進めたかったから年金の停止は緩和していった
さて、在職老齢年金の停止が厳しいのは主に65歳未満の人でした。
65歳未満で在職中という人は、かなり多くの人が年金が一部または全額停止されており、実務上も毎日のように見かける事案でした。
平成6年改正辺りからは、国の考え方が60歳から65歳までは会社に継続して働きましょうというのが強化された時でもありました。平成6年改正で実際に支給開始年齢を60歳から65歳引き上げが決まったからですね…^^
各企業に60歳以上の雇用継続や定年廃止などを導入させるよう法律を変えていき、高齢者雇用を促進させるようになりました。
65歳までは頑張って働きましょう!と。とはいえ、高齢者雇用は給料がとても下がるので、在職老齢年金の計算で支給できる年金があれば、それも一緒に貰って生活の足しにしてくださいと。
あと、この頃に高年齢雇用継続給付という下がった給料の最大15%(平成15年以前は25%だった)の給付金も支給するようになりました。
65歳未満の人はできるだけ賃金で生活して欲しいとの願いから、年金停止基準も厳しめでありました。
逆に65歳以上の人は停止基準がかなり緩くなるので、65歳以上在職のほとんどの人は年金が停止されてる人は居ませんでした。
65歳からは国民年金からの老齢基礎年金の支払いも始まり、継続雇用も終わって本格的な年金生活に入る人がほとんどになるので、65歳からは年金中心の生活をしましょうと。
とはいえ年金中心の生活を始めつつも、そこそこ高所得者であれば年金の停止の対象としますという事で、65歳以上の在職老齢年金を「高在老」と呼ばれていました。
65歳以上で停止されてるとすれば、会社の社長さんとかお医者さんのような非常に高収入の人の場合が目立ったような印象があります。
あまりにも収入が高いので、年金が振り切って全額停止されてるケースが多かったですね^^;
そんな65歳からの停止は緩かったのですが、令和4年4月からの改正で65歳未満の人も65歳以上の人と変わらない停止基準となりました。
以前も言った事ではありますが、今の日本は高齢者雇用を促進して年金制度を支える側にできるだけ回ってほしいと思っています。
支え手に回ってほしいのに、働いたら年金停止されるというと働く意欲がなんとなく低下しますよね。
そこで、そんな足引っ張るような事は緩和して、65歳前の人の年金停止は65歳以上の人と変わらない基準となりました。
従来は給料(月換算した賞与含む)と月の老齢厚生年金額が28万円基準を超えてくると年金が停止されてましたが、その基準が65歳以上の人と同じ47万円となりました。
こうして65歳未満の人の年金を支給しやすくするという事は、年金財政にとっては負担が増加するという事になりますが、それを鑑みても高齢者雇用促進のほうがメリットが高いという事でしょう。
(メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2022年8月31日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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