もう一つは、もちろん安倍元首相が亡くなったことだ。もはや、安倍氏に阿る必要はない。統一教会に関する産経の社説を見てみよう。
政府や政治家は、疑念を払拭できない教団とは明確に一線を画すべきである。まっとうな政治活動や政策まで白眼視される状況を深刻に受け止めなければならない。国民の信用、信頼を失えば、政治は前に進めない。(中略)勝共連合は当初、反共を旗印に自民党右派や右翼団体と接触を図った。これは歴史的事実である。目的が近い団体との接近は自然なことだったろうが、表裏一体の教団による霊感商法などの反社会的活動が明らかになった時点で関係を断つべきだった。
(産経8月12日主張)
統一教会と政治家の関係に触れることは、教会票を差配していたとされる安倍元首相を批判することにつながる。とりわけ、勝共連合と「関係を断つべきだった」というくだりは、安倍氏が存命なら、書けなかったかもしれない。
森元首相の疑惑スクープも、安倍氏に気をつかう必要がなくなった今だからこそできたのだろう。だが、その続報はいまだに出ていない。このまま、うやむやになってしまうのだろうか。
産経の報道が事実なら、検察は森氏を立件すべきである。金額の多寡はともかく、“みなし公務員”の組織委会長が受け取ったのだから、高橋容疑者と同罪とみなされても仕方がない。いやむしろ、元総理だからこそ罪は重いはずだ。
森氏には嘉納治五郎財団問題など五輪招致にまつわる疑惑も残されている。他に、電通出身の大臣経験者の名前も取りざたされている。スポンサー契約がらみでは新たに出版大手「KADOKAWA」の元専務らが贈賄容疑で逮捕されたが、注目すべきは、これから先、政界へ検察が切り込めるかどうかだ。その瀬戸際で、メディアの報道合戦が熱を帯びている。
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