元信者が解説、統一教会と「関連団体」はどのような関係にあるのか

2022.10.25
 

幹部たちに信仰の強さを競わせる教祖

前回の、世界日報の元編集局長の話がそうだが、教祖は、幹部たちに信仰の強さを競わせることで、全体の実績を挙げようとする。統一教会本体の会長・副会長・局長クラス、ハッピーワールドの社長、CARPの会長、勝共連合の事務局長、世界日報の社長・副社長・編集局長などが、教祖直属の幹部で、年に何回か御前会議のようなものに参加していたようである。この幹部たちが、経済活動、布教、VIP渉外などに関する割り当てられた任務をこなすことで、自分こそ一番の信仰者と認められ、お父様(文教祖)からより重要な使命を与えられ、傍で働けるようになりたいと思って、競争する。時として、喧嘩に発展する。それで、世界日報事件のようなことが時々起こる。

その幹部たちが、自分の下にいるカイン(部下)たちの間の競争を煽る。霊感商法で、同じ信者から見ても明らかに詐欺だろうと思われるような行為――霊が降りてきたふりをする小芝居のような演出――が横行したのも、そうした信仰競争の激化の帰結である。彼らの上のアベルも、ノルマを達成するよう強く求められているので、かなり悪質だと分かっていても、“実績”を上げているメンバーにペナルティを科すことはできない。

また、組織同士が張り合っているので、「統一」という名前を冠している割に、組織間の風通しが悪いし、先の万物復帰の話のように、活動領域がかち合ってしまうこともある。日韓関係などをめぐって、勝共連合、世界日報、CARPの公式見解が対立することもある。なので、勅使河原氏の天宙平和連合がやっていることです発言も、満更嘘ではないかもしれない。実際、何をやっているかよく教えてもらっていない可能性はある。

現在、政府が質問権の行使を宣言したことで、家庭連合の解散が視野に入ったと言われているが、ハッピーワールドや天宙平和連合等の関連団体は、別の団体なので、解散にはならない。宗教法人としての税制上の優遇はなくなるが、これらの組織に人と金を移して何とか活動を継続しようとするだろう。

旧統一教会の関連団体は複雑に分岐していた実態を掴みにくい。しかし、だからといって、やたらと巨大な秘密結社のようにイメージして、過剰に怖れ、陰謀論にはまってはならない。「信者数」自体はそんなに大きくない。彼らがいろんな所に手を伸ばしているからといって、その対象になっている自民党や維新の会、地方自治体、保守論壇、学校のPTAなどを全部牛耳っているわけではない。「コロナ」に関連して少し前まで散々言われていたことだが、正しく警戒すべきである。

プロフィール仲正昌樹なかまさまさき
金沢大学法学類教授。1963年広島県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修了(学術博士)。専門は政治・法思想史、ドイツ思想史、ドイツ文学。著者に『今こそアーレントを読み直す』(講談社)『集中講義!日本の現代思想』(NHK出版)『カール・シュミット入門講義』(作品社)など。

image by: Koshiro K / Shutterstock.com

仲正昌樹

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