元信者が解説、統一教会と「関連団体」はどのような関係にあるのか

2022.10.25
 

事務職員のほぼ全員が信者の勝共連合に後援会名簿を差し出す議員も

先ほど信者とそうでない人の区別を強調したが、信者にも、教会の信者として命令されたらどこへでも行かねばならない専従のメンバーである「献身者」と、そうでない人がいる。CARPの場合、学生は休みの期間等には万物復帰のために、他府県に行くことがあるが、基本的に自分の大学で活動しているので、献身者ではない。全大原研の会長・副会長、東京、東日本、中部、関西などのブロック長、いくつかのホームを束ねる学区長や寮母に当たるような役割を果たしている女性は、献身者で、彼らが学生の食口を指導している。

 

統一教会本体の場合、献身者は教会=ホームに住んで布教や万物復帰などをやっていて、その教会に、一般の企業に勤めている人や自営業の人など一般信者が通ってくる。当時は、一般企業に勤めている人で比較的若く、将来献身者になる可能性のある人を「勤労青年」、主婦は「壮婦」、年配の男性は「壮夫」と呼んでいた。ノルマなどが直接課されるのは、献身者だが、献身者はまともな給料をもらっていないし、万物復帰をして稼がないと献金できない。高額献金をするよう求められるのは、主に、教会に通ってくる壮婦・壮夫である。

現在、祝福二世が話題になっているが、同じ祝福二世でも、両親が献身者の場合でずっと「教会内」で育ち、将来両親と同じように教会の指導者になるよう期待されている人と、勤労青年の祝福家庭に生まれた人では、育った環境、教会に対する距離感がかなり異なるはずである。

勝共連合は事務局員はほぼ100%信者だが、「共産主義と戦う」という理念を共有して一般会員になる議員やジャーナリスト、文化人がかなりいた。本当はダメなのだろうが、(恐らく選挙協力などの見返りに)後援会名簿を差し出す議員もいた。当時は自民党だけではなく、民社党系の会員もいた。自民党も、清和会だけでなく、旧中曽根派や宏池会の一部で会員になる人もいた。後援会名簿などのためにかなり水増しになるが、勝共連合会員の数が100万人を超えていたこともある。(自分が登録されていると知らない人も多く含まれている)その全員が統一教会信者だというのは無理がある。ただ、当時から、統一教会―勝共連合と敵対していた左派の人たちは、実体を知っていたのかどうか分からないが、勝共連合の会員とか、会員でさえない、単に勝共連合系のイベントで講演しただけの保守系知識人を、勝共=統一教会信者と呼んでいた。実体を知っている私としては、そういう水増しはかなりひっかかる。

関連団体は保守系論客を広く浅く集めるためのフロント組織

私が脱会した後にできた天宙平和連合、世界平和連合、平和大使協議会なども、同じ様に、事務局などは献身者である信者が担当し、保守系の人を広く浅く集める組織だと思われる。広く浅く集めるために、教義を押し付けることはなるべくやらないようにしていると思われる。これらは、統一教会が有益な社会貢献をして、識者からも認められているという印象を与え、いざという時に守ってもらうためのフロント組織だ――どちらの目的についても、あまり役に立っていなかったことが今回証明されつつあるわけだ。

世界日報については、前回述べたように、社員のほとんどは信者だが、一部、他の新聞を退社して顧問のような立場で再雇用されている人たちもいた。また信者全員が献身者ではなく、何人か勤労青年として雇用されている人もいた。勤労青年の人は、教会の人事で派遣されてくるわけではなく、印刷関係の技術を持っている関係で推薦を受けて、教会系の企業である世界日報に雇用されていたのだと思う。

献身者は教会関連グループ全体の間で人事異動があるが、教祖直属の幹部を除いて、統一教会本体が個々の信者についての詳しい情報を把握しているわけではない――統一教会本体が完全に把握しているのは、祝福に関する情報だけである。世界日報であれば、CARPや統一教会学生部に、今年の卒業生に新聞に向いていそうなメンバーは何人かいるか、という感じで問い合わせ、リクルートしていたようだ。違う団体間で異動する時は、教祖から出される基本方針と、各組織の事情に応じて相互に調整していたようである。

経済活動の合間に布教するという本末転倒

こうした関連団体の中で特別な位置を占めていたのが、「ハッピーワールド」という商社である。当初は高麗人参茶などの輸入販売をやっているだけだったが、私が入信した80年代初頭頃から、海外での事業のための教祖からの献金要求がエスカレートしていくと、この会社を中心に万物復帰を組織化していくようになった。各地区の統一教会が、事実上、ハッピーワールドの支店のようになり、布教の合間に経済活動するのではなく、経済活動の合間に布教するような感じになっていったようである。悪名高い霊感商法も、ハッピーワールド主導の経済活動の一環として行われるようになった。

別の宗教法人や事実上の子会社を介して販売したりしているので、ハッピーワールドの名前は直接出てこないこともあるが、日本の統一教会グループの経済活動全体をハッピーワールドが統括していたのは間違いない。世界日報、勝共連合、世界平和教授アカデミーなど、お金を使うけれど、あまり金儲けの手段を持っていない組織の献身者の給料の大元は「ハッピー」から来ていたと思われる。少なくとも私が入信していた間は、今は経済活動がメインになっているので、日本統一教会の会長・副会長にはあまり実権はなく、ハッピーワールドの社長が、他の組織のことまで実質的に取り仕切っていると言われていた。

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