臓器提供の意思も叶わず。韓国ソウル梨泰院事故の遺族が二度涙を流した無念

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日本人2人を含む156人が犠牲となったソウルの梨泰院群衆事故。現地警察の不手際が次々と明らかになり、警察が警察の強制捜査に入るなど異例の事態となっていますが、そもそもなぜこのような大事故が発生してしまったのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、現在までに報道されている情報を改めて整理。さらにこの事故で命を落とした女性看護師の遺族が、二度涙することとなった痛ましい悲話を紹介しています。

ソウル梨泰院事件と北ミサイルと

今回の事故は誰か一人二人が押したからといったことは成立しない。この人出が予想されていたのに、警察がなにも対策をやらず頓珍漢な場所に警察人力を配置していたことが第一原因だ。

警察の2日前の会議でも「圧死事故」という単語がでるような場があったのになんで当日(29日から)に何もやらずにボーっとしていたんだろうか。29日午後6時半ごろから一般市民からの「危険です」という情報が交番や警察署に届いていたのに、これすら、無視するような形で警察はなにもしなかったのだ。信じられない。

6時半と言えば、事故発生時刻の4時間前だ。梨泰院駅(1番出口)から降りてすぐ坂道を上ることになるのだが、すでにこの辺一帯がものすごい人込みとなっていたのだ。6時半の市民からの情報によると、すでにこのときこの市民は「圧死」という単語を使って警察に梨泰院一帯がどれほど危険の状態になっているかを説明している(電話録音が公開されているし、この通報者自身がテレビの取材に答えて当時の状況や本人が話した内容について録音をもとにしゃべっている)。

6時半から事故発生のちょっと前の10時10分ごろまで重要な通報だけで11件が警察に寄せられていたらしい(全部公開されている)。

梨泰院の1番出口を出て登り勾配を歩く方向をAとすると、この登り勾配を下ってくる方向(B)がある。この路地で事故が発生したのだが、その道幅は3.2mで長さは40メートルほど。このAとBをどちらかを通行規制して一方通行にするだけでもこのような大事故は防げたと思うと、本当に切ない。

事故はこの40メートルの路地の中間地点で起こった。上からの人波と下からの人波がぶつかり合って真ん中にいる人たちが圧迫されたことによる事故だが、この路地の中に推定で1,000人以上が歩いていたというから、1平方メートルあたりだいたい10人の人が存在したことになる。1平方メートルに4人くらいは立てるかもしれないけど、10人立て、といったらこれは不可能だ。

痛ましい消息が次々と出てきているが、筆者が接した消息のなかで次のが最大級に悲しいものだった。24歳ほどの看護師(女性)が事故の犠牲になった。家族は悲しみの中にも彼女が生前、臓器寄贈にサインしていたことを思い出し臓器の提供を病院側に話した。すると担当の医者の答えは、お気持ちはありがたいが残念ながらそれはできない。彼女の臓器が圧迫のせいで台無し(全部破壊状態)になっていたからというものだった。これには遺族は二度、大きな涙を流すことになった。

誰かの責任を追及して犠牲者が帰ってくるわけでもないけれど、今後の流れとしては行政安全部および警察幹部(そして梨泰院が属しているソウル龍山区の区長をはじめとした幹部ら)の進退問題となるだろう。

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