親分のためなら自ら泥をかぶることさえ厭わない。義理と人情を地で行くような男は、安倍氏の内懐に飛び込み、信頼を勝ち得ていったのだろう。2013年5月10日に萩生田氏が「GW最終日は青空のもと安倍総理とゴルフをご一緒した」「前日は夕方から河口湖の別荘にてBBQ」との説明とともに投稿したブログの写真には、加計学園疑惑の中心人物である安倍氏、加計孝太郎氏とともにビールを手に談笑する姿がおさめられていた。
こういう間柄だからこそ、暗殺事件当初は、犯人に対する怒りにふるえ、親分を失った悲嘆にくれていただろうが、政調会長になり、統一教会との関係についての追及が下火になるにつれ、安倍氏の第一の子分として、むくむくと野心が頭をもたげてきたに違いない。日に日に萩生田氏の言動は迫力を増していった。総合経済対策の規模を25兆円にしたい財務省官僚を一喝し、30兆円規模にさせた剛腕ぶりは、その一例である。
萩生田政調会長の活発な動きを苦々しく思っていたかもしれないのは、世耕参院幹事長だ。世耕氏をリーダーとする参院安倍派「清風会」(40人)は派内最大勢力であり、世耕氏もまた派閥の後継会長には自分こそがふさわしいと思っている一人に違いないからだ。
岸田首相が、寺田稔総務大臣を更迭するかどうか迷っていたおり、参院自民党の幹部に電話して相談していたという朝日新聞の記事があるが、その参院幹部とはおそらく世耕氏のことであろう。
岸田首相は、11月23日に公邸で茂木幹事長と面会、24日に麻生副総裁と会食した後、萩生田政調会長とは25日夜、世耕参院幹事長とは27日昼に会食している。むろん主要三派閥の離反を防ぐための涙ぐましい努力だろうが、こと安倍派に関しては、二人に話をしておかなければならないほど岸田首相は気を遣っているのだ。
ポスト岸田を狙う茂木氏と、キングメーカー麻生氏は、弱体化した岸田首相をいつ見限るかわからない。不安にさいなまれる岸田首相は、その無策無能に乗じて政策を実現しようとする萩生田氏の謀計に頼らざるを得ないパラドックスに陥っている。
統一教会疑惑を背負ったままの萩生田氏を更迭することなく党の重職に起用したばかりに、清和会支配の呪縛から逃れられない状況が続いているともいえるだろう。
全方位で「聞く力」を発揮すればするほど、出てくるのは国民の幸福とはほど遠い、既得権にまみれた政策ばかりのような気がしてならない。
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