残る手段は核使用のみ。プーチンが国家の存続に関わる賭けに出た

 

また、12月16日にロシアは、空から発射されたKh-101とKh-55、海から発射されたカリブルミサイルなど76発の巡航ミサイルをウクライナに撃ち込んだ。このうち、16発が着弾し60発は迎撃された。迎撃率約80%である。しかし、内9発が、ウクライナ複数州の電力施設へ着弾し、各所で緊急停電が起きている。

前回のサラトフ州エンゲリス空軍基地とリャザン州ディアギレボ空軍基地での空爆は、Tu-141UAVを使用したようである。ジェットエンジンの音がした後、空軍基地で爆発したので、間違いがない。

ということでソ連時代のTu-141UAVを使用できるようであり、すべてウクライナにあり、残存数は100機程度であるというので、これも使えることになる。

ということで、ロシアの防空能力が低いことが判明している。ロシアにあるべきS300をウクライナに持って行った咎が出ている。

このほかにも、ロシア国内では、多数の大規模火災があるが、パルチザン活動かウ軍特殊部隊もあり、FSBも国内での取り締まりも強化する必要になっているようだ。

もう1つ、ロ軍は、秋の30万人動員のうち、半数をすでに前線に配置しているが、多数の死傷者も生じていることで、戦場でも劣勢であり、単純な突撃をさせて死亡させている。後の半分は冬場に訓練して、1月以降の攻撃に備えている。このため、ウ軍ザルジニー司令官は、ロ軍の大規模攻撃が1月に首都キーウ制圧を再び試みる可能性があるとしている。

それと、ロ軍も動員兵だけの部隊の防御力が弱いことがわかり、戦闘経験がある将兵と動員兵を組み合わせて、部隊編成するようになってきた。しかし、それでもウ軍に対して守勢である。

精密誘導弾を使われると塹壕戦では十分な防御ができないし、逆にウ軍は普通の爆弾を精密誘導にするJDAMを供与されることになり、ロ軍を追い詰める武器が追加された。

このような状況で、ロ軍司令官も、勝利のためには核兵器を使う必要性があると述べ始めている。ロ軍が勝てる方法は、戦術核しかないというようである。

しかし、ゲラシモフ総参謀長官は、核使用に反対なのであろうか、またもや更迭という噂が出ている。ショイグ国防相も、プーチンに低出力の核兵器を使用したいと述べている。徐々にロ軍内部でも核使用を述べる軍人が多くなっている。

NATOは、核を使用したら、クリミアのロ軍を全滅させると述べていたが、それに対してロ軍は欧米に核ミサイルを打つと脅しをかけ始めた。長距離ICBMヤルスを発射台に移動させて、欧米に脅しをかけるようである。

この状況で、ロシアを代表する国際政治学者のドミトリー・トレーニン氏は、「仮にロシアが敗北すればすべてが失われる」と述べ、プーチン政権は国家の存亡にも関わる賭けに出ているとし、そのうえで、軍事侵攻の終結に向けて「解決できるのは2人だ」と述べ、最終的にはロシアとアメリカの首脳による決断によってしか、停戦などは望めないという見通しを示した。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年12月19日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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