憲法に抵触しないのか。防衛省がSNS“ステマ”工作研究に着手の危険

 

自称インフルエンサー、所詮は利用される運命

防衛省が構想している世論操作は、まずAIの技術を駆使し、SNS上にあふれる大量のビッグデータを収集・分析し、どのような対象に工作をするのがふさわしいかなどの全体計画を策定。そして、ネット上で発信力があり、防衛問題でも影響力がありそうな「インフルエンサー」を特定。

さらにインフルエンサーが頻繁に閲覧するSNSやサイトに防衛省側の情報を流し、インフルエンサーが“無意識に”有利な情報を出させようと仕向けるというもの(*4)。結果、防衛省が望むトレンドづくりをしようとする。

すでに2021年秋には、インフルエンサーらに対し、「厳しい安全保障環境」(*5)を説明、防衛費の増額について発信をしてもらう計画が、省内で打ち出されていた。

インフルエンサーとは、影響、感化、効果などを意味する「Influence」を語源とし、社会に対して大きな影響力をもつ人たちのこと。具体的には、タレントやファッションモデル、スポーツ選手や特定の分野の専門家や知識人、あるいはインターネット上で強い影響力を持つブロガーなどが該当。

2002年に出版されたマルコム・グッドウェルの『The Tipping Point(邦題:「急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則」)』により初めて明示された。

防衛省や自衛隊によるインターネット発信活動、2020年の夏ごろから活発に

これまでにも、防衛省は自衛隊への支持や理解を広げようと、TwitterなどのSNSにおける発信をしてきた。今回の試みは、さらにそれを踏み込んだ形ともいえる。

「ネットは反応が早く、手応えがある。国民の理解を得るための有力なツールだ」(*6)

自衛隊のある幹部は、こう証言する。

そもそも、防衛省や自衛隊によるインターネット発信活動は、2020年の夏ごろから活発になってきた(*7)。当時の河野太郎防衛相の意向がきっかけであるという。

河野氏自身、Twitterで自衛隊の発表を積極的に引用。多くのコメントがついたという。さらに防衛省による正式な発表前の内容を、ツイートで明らかにしたケースもあった(*8)。

事実、陸海空の3自衛隊は、“競い合うように”Twitterを更新。豪雨などの災害派遣の際には、活動の様子をリアルタイムに近い形でアップ。

海外に目を向ければ、他国の世論に介入する「情報戦」の重要性も高まっている。ただ、昨今の防衛費をめぐる議論でもわかるように、結局は防衛省も“仕事”と“カネ”が欲しいだけ。国民の“利益”よりも、防衛省の“省益”が重要だそうだ。

引用・参考文献

(*1)西日本新聞「防衛省が世論誘導研究」2022年12月10日付朝刊

(*2)西日本新聞、2022年12月10日

(*3)西日本新聞「正体見えぬ情報戦 危険も」2022年12月10日付朝刊

(*4)西日本新聞「防衛省が世論誘導研究」

(*5)西日本新聞「正体見えぬ情報戦 危険も」

(*6)西日本新聞「正体見えぬ情報戦 危険も」

(*7)西日本新聞「正体見えぬ情報戦 危険も」

(*8)西日本新聞「正体見えぬ情報戦 危険も」

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年12月18日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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