プーチンと“同じ過ち”を犯すことになる日本。石垣・宮古に「攻撃ミサイル基地」という愚行

 

中国の海軍近代化の目的は

「万が一」の落し穴は、相手の力を分析する場合にも気を付けなければいけない。私は、中国の海軍近代化の目的はさほど侵略的なものではなく、基本的には防衛的な性格のものだと判断している。「中国の海軍力増強が目覚ましい」→「今にも日本に攻めてくる」→「太平洋の西半分を支配することを目指している」といった幼稚な反応は排除しなければならない。

中国の海軍近代化のきっかけとなったのは、1996年3月の台湾海峡危機である。同月23日に予定された台湾総統選挙で、北京が“独立派”と見なして警戒する李登輝の当選が確実視されている中、中国軍が3月6日、演習と称して台湾南部の高雄市の眼と鼻の先の海上にミサイルを発射して牽制するという愚挙に出た。これに対して米クリントン政権の反応は素早く、ただちに西太平洋にあった第7艦隊の空母インディペンデンスを中心とする戦闘群を台湾海峡に向かわせると共に、ペルシャ湾にいた空母ミニッツとその戦闘群にも回航を命じた。

圧倒的な戦力を持つ米空母戦闘群2個がたちまち台湾海域に急派されたことに、中国の江沢民政権は呆然となった。それこそ万が一にも台湾が独立を宣言した場合は武力を以てでも阻止するというのは中国の建国以来の国是のようなもので、そのため毛沢東の人民戦争論に基づく人海戦術的な台湾侵攻シナリオを後生大事に抱えてきた。もちろん中国はそんなものを発動したくないし、台湾も敢えて独立の言葉を弄んで中国の武力介入を招くことは避けるので、実際には起こらないのだが、しかし中国にしてみれば、少なくとも建前として台湾侵攻シナリオは維持しておかなければならない。ところが、たちまち米空母群2個が立ち現れては制空権も制海権もあったものではなく、全く手も足も出ない状態となることを思い知った。

そこで、まさか米第7艦隊に勝てるとは言わないまでも、せめてその接近を拒否し、抵抗して到着を遅らせる程度の近代的な海軍力を持たなければ話にならないじゃないか、ということになった。そのためにまず、

1.98年にウクライナから旧ソ連製の中古空母を購入してこれを研究用・訓練用として運用しながら、自前の空母建造、やがて空母艦隊の創設に向かって走り始めた。同時に、

2.短・中距離ミサイル攻撃能力の増強にも励み、すでに日本・沖縄、韓国、フィリピン、グアムまでの米軍基地を壊滅させるだけの力を備えたと言われる。米ランド研究所が15年に出した報告書(本誌No.815で既報)では、96年には台湾と韓国に届くDF-11、-15ミサイルを数十発保有するだけだった中国は、20年後の17年には、そのDF-11、-15は数千発、日本とフィリピンの全土に届くDF-21C、DH-10も数千発、グアムのアンダーセン米空軍基地に達するH-6などの中距離ミサイルは数百発を保有するに至っている(これは2015年段階での17年の予測で、それから5年が過ぎた現在ではさらに中国のミサイル能力は量も質も向上している)。これによって、沖縄はじめ日本に米軍基地を前進配置しておくことはもはや意味がないどころか危険なだけだとする意見が、米軍事専門家の間でも上がりつつある。

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