プーチンと“同じ過ち”を犯すことになる日本。石垣・宮古に「攻撃ミサイル基地」という愚行

 

「万が一」が「億が一」「兆が一」に

軍事は、常に「万が一」を考えなければならないのは当然である。Think Unthinkable ──考えられないことまで考えておけというのが、戦略論の教科書の第1ページに掲げてある標語であって、確かに想像力を働かせて、ほとんどあり得ないと思えることでも簡単に投げ捨てずに一応は真面目に考えてみるという態度が必要である。しかしそれが想像力の域を超えて空想力となって宙を舞ってしまうと訳の分からないことになる。

想像力と空想力とをどこで隔てるのかは難しい。私は「想像力には足があるが、空想力には羽があっても足がない」というような言い方で学生に説明したことがあったが、想像力はどこまで膨らんでも現実に足が着いていなければならないのに対し、空想力はそうではない。

万が一に備えるのが軍事だが、その万が一の中のどこか1カ所に着目してその部分を拡大し、そのまた万が一を覗き込むという風にすると、1万分の1×1万分の1=1億分の1で、それはもう空想力の世界を浮遊するのと同じだろう。

上の例で言えば、北朝鮮の難民が日本に向かうというのはほとんどあり得ないが、全くないとは言い切れない以上、まだ「万が一」の範疇かもしれない。しかしそれが「九州、中国地方」から「離島」に絞られ、それが今度は「尖閣」に変換されたあたりが「億が一」くらいだろうか。そこから再び増殖されて「与那国に守備隊」から「石垣・宮古に攻撃ミサイル基地」というように、空想から架空へと成長していくともはや「兆が一」になってしまう。その裏側には実は決して語られない1つのストーリー「北海道の陸自の持って行き場を作れ!」があって、それがこの跳躍の衝動を生み出しているのである。

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