なるほど。徳川将軍のお雑煮には「お餅」が入っていなかった深いワケ

sticky rice cake in vegetable soup
 

家康について餅から話を転じます。

歴代将軍は水練が得意でした。これは家康の遺言によります。負け戦になり、敗走中に川を渡らなければならない時、溺れてはならじ、ということです。野戦の最中であれば家臣が身代りを務めてくれるが、泳ぎの身代りは立てられない、自分で泳がねばならないのです。

家康の遺言を守り、歴代将軍は水練の稽古を怠りませんでした。江戸城の堀で古式泳法を披露した将軍さまもいたとか。立ち泳ぎのまま扇子に筆で文字を記す、という具合ですね。将軍が水練熱心でしたから大名たちも水練の稽古を積極的に行っていたそうです。

ところが、将軍の直臣たる旗本たちには情けないエピソードがあります。幕末、幕府は西洋式の陸軍を創設しました。その中核となるのは当然ながら旗本です。幕府は西洋式軍隊の調練を行う為にフランスから軍事顧問団を招きました。

フランスの軍事顧問団は隅田川で水練を実施しました。ところが、泳げずに溺れる旗本が続出したのでした。旗本たちは水練ばかりか野戦の軍事調練も文句ばかり言って、すぐに根を上げたそうです。軍事顧問団は、旗本たちを精神力、体力供に農民に劣る、と呆れたとか。

幕府陸軍は頼りない旗本ではなく、火消しや博徒たちを集めて戊辰戦争を戦います。旗本は先祖代々、将軍から禄を与えられてきたのです。幕府存亡の危機にあって、今こそ神君家康公以来の御恩に報いる時にもかかわらず、旗本たちは役に立たなかったのですね。

泰平が続き、武芸は合戦の為ではなく武士のたしなみになってしまったのでした。平和ボケと言えるのかもしれません。幕末は外圧によって動乱が起き、泰平の夢が破られました。

2023年の現在、世界はきな臭い状況になっています。日本人は平和ボケという言葉が耳に入るようになりました。幕末の動乱は明治維新を誕生させましたが近い将来、世の中が激動するのでしょうか。

庶民としては平和ボケで暮らせる世の中であって欲しいものです。

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