会社から現場までの「移動時間」は労働になる?賃金が発生する条件とは

Handsome driver at the wheel of a truck at work.
 

これは、たとえば訪問介護事業などで、Aさん宅からBさん宅への移動についても同様に考えます。この移動時間については、労働時間としなければなりません。ただし、(その日の1件目の訪問先として、)自宅から直行でAさん宅に向かう場合には、その移動時間はAさん宅への出勤時間と考えられるため、必ずしも賃金支払い義務は生じません(この場合には、Aさん宅で業務を始めた時点で、事業主の指揮命令下に入ったと考えられます)。

ですから、ご相談先の会社でも、労働者の自宅から現場への直行であり、しかも、移動に使用する車両を業務には使用しない(単なる移動手段)といったことであれば、自宅から現場までの移動時間は“出勤時間”と考えられ、賃金を支払う必要はないという事になります。でもそれは、こちらの会社さんには難しいでしょうから、やはり、今回のご相談では、移動時間については労働時間として扱う必要があります。

※ 参考までに…

事業主の指揮命令下に入った後でも、労働者が自由に使える時間については休憩時間となります。たとえば、始業時刻の10分前の出社を義務付けている会社の場合、始業10分前に事業主の指揮命令下に入った(業務が開始された)と考えます。

ただし、始業時刻までの間、何ら業務指示等がなく、労働者が自由に過ごせるのであれば、その10分間は労働時間とはいえず、休憩時間と考えられます。ただ、そうであれば、10分前出社を義務付ける意味はあまりないでしょうから、極力、このようなことは避けた方が良いでしょう。労働者は、けっこう、不満に感じていることが多いですよ(ときどき、労働者からこのようなご相談を受けます)。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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