日本人数学博士の女性率たった6%の異常。恐ろしい「無意識バイアス」の現実

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日本の大学の理工系学部は男子だらけ。進学する女子が少ないので当然ですが、理系の博士号を取得する女子比率は低く、数学博士に至っては女子比率6%とのこと。世界では56%のルーマニアを筆頭に40%台の国も多く、6%は異常な数字です。理系を志す女子高校生が増えているとの報道に接し、これまでの異常さを伝えるのは、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、健康社会学者の河合薫さん。日本のこうした極端な状況を作ったのは、親世代の思い込みや偏見のせいと指摘。「無意識バイアス」のために可能性の芽を摘んではいないか、価値観を疑う必要があると訴えています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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数学って楽しい!?「リケジョ」に関する話題2つ

今回は「リケジョ」に関する話題を2つ取り上げます。1つ目は、大手予備校の分析で「女子受験生で理系志向が高まっている」というニュースです(朝日新聞朝刊1月10日付)。昨年10月に行われた模擬試験のデータで、男女を問わず難関大や「医」「理」「工」などの理系学部への志望者が増えているというのです。

理系を目指す若い女性の少なさは、かねてから問題になっていました。たとえ理系の成績のいい女子生徒がいても、親から理系に進むのを反対されたり、難関大に進学できる成績でも、親から「女の子だから」と言われ、泣く泣くレベルを落として地元に残る女子学生が少なくありませんでした。

つまり、女子学生の進路は「親世代の価値観」と深く関係していたのです。その結果、諸外国に比べて、圧倒的に日本の女性の科学者、理系研究者や教授職の数は少ない状況になっていました。

以前、日経ビジネスで、北海道大学大学院理学研究院の黒岩麻里教授と対談した時も、「体感としては、この10年ほぼ変わらない、10年というかもっと以前から国立大学などで理系の女性の教員を増やそうと試みがされてきていますけど、全く変わらない」と嘆いていました。

これらはすべて「無意識バイアス」によるものです。「女性は理数系が苦手」という無意識の刷り込みが、周りの評価だけでなく、本人の自己評価を下げ、挙げ句の果てに「成績」まで影響します。

今回、理系を積極的に目指す女子学生が増えた背景には、コロナ禍で親の在宅勤務により親子の対話が増えたことや、親世代の価値観にも変化が出てきたことが影響した可能性が高い、とのこと。

無意識バイアスは、あくまでもイメージでしかないので、理系に進む女子学生が増えれば、「理系=男子」というイメージや、「女性=理数系が苦手」というイメージが消え、女子学生の理系志望者が増えていくことが期待できます。

もっと自由に、自分の価値判断で進学する大学や学部を決められるようになれば、低迷する日本の科学の起爆剤になるかもしれません。女性がノーベル博士になる日も近いかもしれない。少しでもいい流れにつながればいいと、心から願います。

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