見切り発車が奪う命。岸田「コロナ5類移行」で日本の医療は崩壊する

 

私は内心「もし脳卒中だったとして、入院できないなら、いったいどうすればいいのか」と動揺したが、他の病院にあたるゆとりはなく「すぐに行きます」と返事をした。

その病院でCTとMRIの検査をした結果、脳の毛細血管が梗塞を起こし、その周辺の感覚をつかさどる細胞がダメージを受けていた。悪化すると手足が動かなくなる恐れがあるので、すぐに点滴治療を受けたのだが、見るからに誠実そうな医師は申し訳なさそうにこう言った。

「本来なら入院するケースですが、コロナで病院スタッフの数も減っていて、ベッドに余裕が全くありません。しばらく通院して点滴治療を受けてもらいます。もし帰宅して手足が動かなくなったら、救急車を呼んで、入院できる病院へ行ってください」

つまり、通院による点滴治療だけで対処できればいいのだが、悪化して手足が動かなくなるケースがないとはいえない。その場合は入院が必要だが、この病院では受け入れができないということである。新型コロナの蔓延でスタッフが次々と倒れ、病院運営がかなり難しくなっている状況がうかがえた。

運よく、病態が悪化することはなかったが、右半身の不快な痺れ感はいまも残ったままで、危険を回避するため車は売却した。最初のうちはパソコンのキーボードを打ったり歯ブラシを使うときにうまくいかなかったが、慣れるにしたがって、もとに戻ってきた。休日にもかかわらず、初めての患者を受け入れてくれた脳神経外科病院には感謝するしかない。

妻のほうは、新年に入り連日、抗がん剤の副作用で激しい下痢と高熱に見舞われ、みるみるやせ細っていった。1月26日の朝、キッチンで大きな音がしたので飛んでいくと、妻が虚ろな眼で仰向けに横たわっていた。リンゴの皮を剥いていて気分が悪くなり、一時的に意識を失って倒れたらしい。

かなり強く体を打ちつけたとみえ、前頭部が腫れ、肩や腰が痛いというので、救急車を呼んだ。胃がんの治療を受けているA病院に運んでほしいと依頼し、救急隊員がA病院に連絡したが、脳外科の医師が休みで転倒事故の診察ができないという理由で断られた。

救急隊員は別の搬送先を探したが、なかなか受け入れてもらえない。ようやく探し当てたB病院で妻は検査を受け、右上腕部を骨折していることがわかったが、ここでも整形外科医が手術中という理由で治療は受けられず、B病院の紹介状を持って翌日あらためてA病院の整形外科を受診することになった。

A病院でもすんなりとはいかなかった。ベッドが満床で入院できないため、手術はできないという。それを承知したうえでの受診である。幸い、妻の場合は患部を1か月ほど固定する処置ですんだが、手術が必要だったら医療難民になるところだった。私の脳梗塞も、軽かったからよかったものの、もし重い病態だったら、入院もままならない現下の医療体制では対応できなかったかもしれない。

これを「医療逼迫」というのだろうが、運悪く十分な医療が受けられずに命を落とした人々もいると思うと、実にやるせない。

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