アベノミクスの“二の舞い”か?不安しかない岸田政権「異次元の少子化対策」の大問題

2023.02.16
 

一方、女性の社会進出が進んだ欧米諸国などは、基本的に企業や官僚組織などで年功序列、終身雇用は採用されていない。新卒の一括採用はなく、組織が必要とする業務について人材を募集する。組織は、将来幹部になるかどうかは関係なく、その時その時の業績で人材を評価する。

課長、部長から社長まで幹部も外部に公募されて決まる。内部昇格もあるが、その際も、外部から応募してきた人材と公平に審査されて、内部の人材が優秀と判断された場合である。

欧米でも女性は結婚、出産で組織を離れることはあるが、キャリアアップのハンディになることは少ない。離職前の経歴をアピールして、いろいろな組織の幹部の公募に挑んでポジションを得ることができるのだ。

だから世界の女性政治家、女性企業経営者・幹部、女性の学者には、パートナーを持ち、出産・子育てを経験している人が多い。「働き方改革」が遅々として進まず、いまだに結婚・出産がキャリアの墓場となる女性が多い日本とは大きな違いがある。

kmkb20230115-4出典:I-2-14図 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較) | 内閣府男女共同参画局(gender.go.jp)

「少子化問題」に話を戻したい。日本経済新聞の調査によれば、「子供はいた方がよいと思いますか」との問いに「そう思う」と答えた20代女性は20%以下だ。「子供が減っている理由は何だと思いますか」との問いには「家計に余裕がない」「出産・育児の負担」「仕事と育児の両立難」が上位を占めた。

また、「結婚はした方がよいと思いますか」との問いに、30代女性のわずか9%が「そう思う」と回答した。結婚が減っている理由は「若年層の低賃金」「将来の賃上げ期待がない」などが上位を占めた。

要するに、おカネがないから、結婚できないし、子どもも持てないということだ。その原因は、日本では結婚して子どもができると、妻は離職して専業主婦になるか、正規雇用の職を失い、非正規雇用になるしかない「日本型雇用システム」にある。

つまり、結婚すると、所得が減ってしまうことが問題なのだ。これは、簡単な事例で考えてみればわかる。職場結婚を考える同期の正規雇用のカップルがいるとする。年収は2人とも500万円。結婚で妻は退職する。2人で夫の年収500万円を使うことになり、一人当たり、250万円となる。子どもができるともっと少なくなる。

妻が非正規雇用で働くとしても、夫の500万円+100万円で合計600万円。やはり、一人当たり300万円ずつ結婚前より使えるおカネは少ない。要するに、結婚すると生活が厳しくなる。これでは結婚し、子どもを持とうという気にならないのは当然だ。

一方、結婚後に2人とも正規雇用で働き続けることができるならば、どうだろうか。年収が500万円+500万円=1,000万円となる。これならば、結婚したほうが使えるおカネが増えるということになり、結婚しようという気持ちになるし、子どもも複数持とうという気になる。

人生全体を考えると、年収500万円で40年間働けば収入の合計は2億円だ。これが夫婦二人なら世帯年収は4億円になり、その10%を貯蓄し続ければ40年後には4,000万円ほどの財産が作れることになる。

これならば、家を買おう、車を買おう、外食しよう、旅行に行こうという気持ちになり、消費も上がる。そして企業は、政府から無理な賃上げを強いられるよりも、今いる正規雇用を維持し、例年通り大卒の女子を正規雇用し続けるだけ、売上げが増えて、業績が増えていく。長くデフレに悩む日本企業の復活にもつながる。

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