これではプーチンの思う壺。巷の「ロシアは悪くない論」を信じてはいけない根拠

 

善悪論で考える

これでHさんの質問には答えました。しかし、巷では、「ロシアは悪くない説」が流行しているので、それについてお話ししようと思います。

どんなケンカ、対立、戦争でもそうですが、「双方の言い分」があります。たとえばロシアが、「アメリカは1990年の約束を破って、NATOを拡大しつづけた」と非難するとき、ロシアのストレスも理解することができます。なんといっても、冷戦終結時16か国だった「反ロシア軍事同盟」NATOは、現在30か国まで増えているのですから。私も「NATO拡大、やめておけばよかったのに」と思います。

ただ約束を破ったといえば、ウクライナ側にも言いたいことがあるでしょう。たとえば1994年12月の「ブタペスト覚書」。内容は、「ロシア、アメリカ、イギリスがウクライナの安全を保障するから、ウクライナは保有する核兵器を放棄する」というもの。アメリカとイギリスは現在、ウクライナを支援することでこの覚書を守っています。しかし、ロシアは、ウクライナを侵略することでブタペスト覚書を破っています。

私は、何が言いたいのでしょうか?

戦争の善悪論は、双方に言い分があるということ。では、「善悪」は決められないのでしょうか?そんなことはありません。個人のケンカ、対立、企業間のケンカ、対立、善悪はどうやって決まりますか?そう、「法律」で決まります。では、国家間の争いの善悪は、なんで決まるのでしょうか?そう、「国際法」で決まります。

国際法には、「合法的戦争」があります。一つは、自衛戦争。たとえば、北朝鮮が日本にミサイルを撃ち込めば、日本は憲法を改正しなくても反撃できます。これは、自衛戦争で合法だからです。歴史的な例としては、アメリカのアフガン戦争があります。今のウクライナも、自衛戦争、つまり合法的な戦争を戦っています。

二つ目は、国連安保理が承認した戦争です。歴史的な例としては、1991年の「湾岸戦争」があります。

さて、ロシアのウクライナ侵攻は、自衛戦争でしょうか?違います。ウクライナは、ロシア領を攻撃していません。ロシアのウクライナ侵攻は、国連安保理が承認した戦争でしょうか?もちろん違います。

というわけで、いろいろな人がいろいろなことをいいますが、善悪論の決着はついているのです。答えは、「国際法によると、ロシアのウクライナ侵攻は悪だ」です。

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