これではプーチンの思う壺。巷の「ロシアは悪くない論」を信じてはいけない根拠

 

イラク戦争も悪の戦争だが

世界情勢に詳しい人は、気づいたことでしょう。では、アメリカのイラク戦争はどうなのでしょうか?

あれは、自衛戦争ではありません。イラクは、アメリカを攻撃していません。国連安保理の承認も受けていません。そう、イラク戦争は、「国際法違反の戦争」だったのです。

この件で、私に良心の呵責はありません。私は、メルマガでも過去本でも、「イラク戦争は国際法違反だ」と書きつづけてきたからです。

プーチンは当時、「アメリカのイラク侵攻は、国際法違反だ!」と批判していました。これは、本当にその通りだったので、多くの支持を得たのです。

当時世界は、アメリカ一極世界に飽き飽きしていて、フランス、ドイツ、ロシア、中国を中心とする多極主義陣営が力を増していました。プーチンは当時、フランスのシラク大統領、ドイツのシュレーダー首相、中国の胡錦涛国家主席などと組んで、アメリカ一極支配に挑戦していたのです。そして、プーチンを英雄視する人たちが現れてきました。

しかし、プーチンは昨年2月24日、ブッシュと同じ「国際法違反の戦争」を開始したのです。「殺人は悪いことだ!」と非難していた人が、自分で殺人事件を起こしたようなものです。

その人は、引き続き英雄でいられるでしょうか?そんなはずはありません。「アメリカは、国際法違反の戦争をしている」と非難するなら、自分自身は国際法を守る側にいるべきでしょう。そうあってこそ、国際社会での支持と尊敬を得つづけることができるのです。

というわけで、プーチンは、「大戦略的失敗」を犯しました。だから私は、戦争が始まる前から、「ロシアがウクライナに侵攻すれば、戦闘に勝っても負けても、ロシアの大戦略的敗北は不可避だ」と言っているのです。

結局、予想通りの展開になっています。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル2023年2月23日号より一部抜粋)

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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