ロシアへの「武器支援疑惑」で中国を揺さぶり始めたアメリカの“狙い”

 

匿名の高官の発言から始まるのはアメリカの対中攻勢のパターンだ。最後はアントニー・ブリンケン国務長官が出てきて疑惑に拍車をかける。一年前にも同じことが起きた。当然、中国は反発するが、ほどなくして匿名の高官が再び登場し「中国にロシア支援の動き見られず」と火消し。疑惑の幕は閉じられた。

要するに実態のない疑惑なのだが、この間、検証能力を欠くメディアは疑惑を流し続け、世界には「中国が裏でロシアを支援」というイメージが定着してしまう。

今年2月18日、ブリンケンがミュンヘン安全保障会議に出席し、中国の王毅党中央政治局委員と会談した後、SNSで「中国がロシアに物質的な支援を提供しないよう警告した」と投稿したのは、まさにデジャヴだ。

同じタイミングで20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議のためインドを訪れたジャネット・イエレンも中国を名指しし、「ロシアへの物資提供やあらゆる形の組織的な制裁回避に対し我々は深刻な懸念を抱いている」と追い打ちをかけた。

中国側はこれに激しく反発。定例会見で中国外交部汪文斌報道官は「根拠なき中傷」、「戦場に武器を提供し続けているのは米国であって中国ではない。米国には中国に指図や命令をする資格はない」と応じたが、情報の拡散を止められたとは思えない。

中国は自国の気球がアメリカに撃墜された問題でも、「アメリカは残骸を拾い上げ、分析した。中国はその進展を明かすように求めたが、アメリカ側からの反応はない」と不満を漏らしていた。証拠がなくても情報は拡散され、イメージは造られるのだ。

実際、アメリカのテレビPBSの番組「ニュースアワー」に出演したウィンディ・シャーマン米国務副長官も、中国のロシア支援疑惑についてキャスターから「具体的に中国が検討しているどのような支援のことを指すのか」と問われても明確には答えなかった。

不思議なのは、米中のこうした攻防の舞台となったインド(南部ベンガルール)に対しては、バイデン政権も中国とは違ってどこまでも寛容な点だ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年2月26日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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