プーチンにも習近平にも怯まず。ウクライナ戦争後のカギ握る大国の名前

 

なぜアメリカの支援策にインパクトが感じられないのか

別の視点では、NATO内で突出するアメリカからの支援のイメージを、もろ刃の剣と言えますが、それをあえて際立たせ、なかなか支援が到達しない欧州各国にメッセージを送ると同時に、Post-Ukraineの国際秩序づくりにおいて主導権を主張するための動きと見ることもできると考えます。

ただ、その割には、バイデン大統領やイエレン財務長官からウクライナに示された支援策がもう一つインパクトに欠けるように思いませんか?

この疑問に対しては、調停グループのメンバーであり、アメリカ政府の元安全保障政策のアドバイザーだった方が答えをくれました。

バイデン政権が、昨年1月(ロシアによるウクライナ侵攻前)から徹底しているラインは、【ロシアからの侵攻に対してウクライナを負けさせないための支援】であり【ウクライナがロシアを圧倒するための支援】ではないという姿勢です。

その結果が、現在、私たちが目にしている戦争の長期化と泥沼化となり、決して褒められた状況ではないはずですが、その背後にある思惑を聞くと、思わずうなずきます。

それは驚く内容ではないのですが、ロシアを過度に刺激すると、プーチン政権内にいる過激派の影響力を強めてしまうことになり、プーチン大統領に核兵器の使用を迫る結果につながりかねないとの懸念から選択しているぎりぎりのラインといえます。

アメリカが追求するウクライナ支援の性格は【あくまでもロシアによる攻撃・侵略を跳ね返すに十分なレベルに止めておき、ロシアとウクライナの間の戦力バランスを崩さない工夫】と表現できるかもしれません。

これにはアメリカ政府から見た“ロシアによる侵攻前から変わらないウクライナの立ち位置”が影響しています。

狙うはロシアの弱体化。ウクライナの徹底抗戦を支える米の思惑

2014年のクリミア半島情勢以降、アメリカ政府はウクライナに肩入れし、8年の間にロシアに次ぐ陸軍を作り上げることに専念しました。その甲斐あって、プーチン大統領の思惑とは違い、ウクライナはロシアからの攻撃に抗戦し得ています。

しかし、兵力と飛び道具に勝るロシアがウクライナのライフラインを破壊し、補給路を爆撃するようになると、戦闘のレベルが上げられ、ウクライナとしてはそれに抵抗することを望み、さらなる支援のレベルアップを要求してきましたが、アメリカが提供してきたのは攻撃兵器ではなく、あくまでもウクライナ防衛のための装備に過ぎません。

【ロシアを追い詰めたり、過度に刺激したりしてはいけない】【この戦闘がロシア領内に波及するような事態に発展させてはならず、ましてやロシア領内への攻撃、ロシア領内での戦闘に繋がることは許さない】という確固たるラインがアメリカ政府側にあるため、いくら望んでもアメリカからは戦闘機の供与はなく、以前、ポーランドが供与を表明した後、即座に撤回させられたのもそのようなスタンスが影響しています。

ウクライナが消耗戦を戦い続けるには、継戦能力を支える欧米諸国とその仲間たちからの支援の量が命綱となりますが、それはあくまでも対ロ抗戦のためであり、ロシアと戦争をするものではないという位置づけです。

同時にアメリカはロシアがまだ多くの武器・人的資源を保有していることを十分に認識し、ロシアが長期戦・消耗戦を得意としていることも知っていて、ロシアが決して今回の戦いを断念することがないことを知っているようです。

ウクライナにロシアを攻撃させるというレッドラインを超えさせるわけにはいかないが、ウクライナがロシアによるaggressionに対抗するに十分なレベルの支援を与え、ウクライナでの戦いを継続させることで、ロシアの弱体化を進めたいというのが思惑のようです。

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