プーチンにも習近平にも怯まず。ウクライナ戦争後のカギ握る大国の名前

 

なぜインドがウクライナ戦争後の「台風の目」となるのか

これらの内容・意図などについては、これからお話ししていきますが、Post-Ukraineの世界秩序作りにおいて決して無視できず、恐らく台風の目となって大きな力を発揮しそうな国があります。

それはインド政府です。

ウクライナ戦争がいずれ終結した後の国際秩序のかたちを予想するために、インドがこれからどのように振舞うのか。長年の友人であり、メンターでもあるプーリー氏が久々に来日し、今回もいろいろと議論しましたので、その一部の内容に触れながら、お話いたします。

この話を進めていくにあたり、皆さんに想像していただきたいのですが、【インドの置かれている特殊な立ち位置】にお気づきでしょうか?

一つ目の立ち位置は、このコーナーでも何度か触れているように、第3極の軸になる存在で、欧米サイドと中ロサイドの真ん中に立ち、どちらに対しても影響力を発揮できる立場にいます。今回のロシアによるウクライナ侵攻に対しても、侵攻という行為に対しては、国際法に違反する行為として正面から批判する姿勢は一貫していますが、アメリカや欧州各国から求められるような対ロ制裁の輪には加わろうとしません。

代わりに欧米諸国とその仲間たちがロシアに課す厳しい制裁の悪影響が途上国全般に波及している事態に鑑み、締め出されたロシア産の石油や石炭を引き受けて、インドで精製し、それを各国に供給するという特殊な立ち位置を確立しています。相次ぐ大地震で今、外交面での行動が取りづらいトルコの役割も引き受けて、途上国に対する影響力を強め、今、流行りのグローバルサウスの主として君臨していると言えます。

中ロとは対等、日米欧豪からも一目置かれるインドの特殊な立ち位置

2つ目の立ち位置は、インドを第3極の主(ぬし)たらしめている面でもあるのですが、インドは中ロと共に上海機構の主要メンバーとしての顔を持ち、中ロが画策するユーラシア・アジアSouth Corridorの一端を担っており、中ロ中心の国家資本主義体制の成否を左右し得る立場にあります。

ロシアのプーチン大統領に対しても、モディ首相ははっきりと苦言を呈し、それをプーチン大統領もきちんと聞き入れているように、ロシアからの多大な信頼を得ています。

中国については、アジア全域におけるスーパーパワーとして認めつつ、中国が南アジアを力で陥れることには抵抗し、直接長い国境を共有する隣国として、そしてアジアにおけるもう一つのパワーハウスとして、対等の立場でものを言っています。上海機構会議で行われた中印首脳会談でも習近平国家主席と率直に話を行い、今後の国際秩序の在り方について深く議論し、アイデアをシェアしあったと聞きます。

中ロに対して影響力を持つという顔と同時に、インドは日米豪とクワッドの軸となる存在であり、日米豪ともつながるという非常に特異な立ち位置を持ちます。アメリカ政府から再三求められる反ロシア包囲網への参加に対しては明確に拒否を続けていますが、伸長する中国の影響力に対抗する必要性という“インド・太平洋地域における安全保障体制”の一角(注:プーリー氏曰く「中国包囲網における日印豪のトライアングルの西の端の蓋の役割を果たし、アメリカがこのトライアングルの中で自由に動き回ることができるための大事な役割を果たす」とのこと)を占めるという立ち位置ゆえに、アメリカ政府や日豪、そして欧州各国からも一目置かれている存在です。

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