G20に外相欠席という大失態を犯した日本
この姿勢はウクライナのみならず、2020年代の国際安全保障環境の“もう一つ”の懸念事項である台湾情勢に関するアメリカの対台湾支援の性格にも反映されています。
ペロシ前下院議長一行の訪台以降、アメリカによる対台湾支援の拡大が報じられていますが、アメリカが台湾に供給するのは、あくまでも中国人民解放軍が台湾海峡を渡って侵攻してくるのを防ぐための装備・武器であり(例えば対艦ミサイル)、中国に攻め入るための装備は一切供給していません。
これもアメリカが中国を過度に刺激せずに明確なメッセージを伝えるためのぎりぎりのラインと思われますが、昨年来のアメリカによる対ウクライナ支援も同様の性格を有しています。
ロシアとウクライナの戦闘はまだまだこれからも続くものと思われますが、戦闘の最前線で一進一退の状況が見られる背後ではすでに【戦後の世界秩序】についてのせめぎあいが見られます。
世界の警察官の役割を果たすことが出来なくなった米国。旧ソ連に代わってアメリカと対立する超大国に成長し、アジアのみならず、世界情勢でも影響力を誇示したい中国。すでに世界のトップラインからは排除されていても、常に国際秩序の内輪に痛いと望み、大国意識が決して抜けないフランスや英国。同じ欧州でもこれまで安全保障問題で目立つことを避けてきたが、ついに重い腰を挙げなくてはならないドイツ。欧米主導の国際秩序から距離を置き、徒党して対抗したいグローバルサウス。
そのすべてに対して健全な距離感を保ち、影響力を発揮できるインド。
これが今後の国際情勢の行方を左右するメインプレーヤーだと考えますが、果たして日本はこの一角を占めることができるのでしょうか?
先ほどインドから報告が入り、G20の場でアメリカのブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相が久々に対面での協議に入ったようですが、そのお膳立てをしたのが、インドのモディ首相とジャイシャンカル外相だったようです。
米ロの直接協議の結果、何が出てくるのかとても楽しみでありますが、同時にそのような大きな動きがなされている現場に、日本の外務大臣が不在という失態に対しては、ただ残念であると感じざるを得ません。
以上、国際情勢の裏側でした。
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