プーチンにも習近平にも怯まず。ウクライナ戦争後のカギ握る大国の名前

 

欧米と中ロ陣営が直接議論できる最後の場に見えぬ日本の姿

そして忘れてはならない3つ目の立ち位置が【2023年のG20議長国】としての顔です。

国連の場や他の国際的なフォーラムから次々とロシアを排除している欧米諸国とその仲間たちですが、G20においてはロシア・中国と共に参加することを余儀なくされており、G20はもしかしたら欧米諸国とその仲間たちと中ロ陣営が直接顔を突き合わせて議論できる最後の場なのかもしれません。インドはインドネシアから議長のバトンを引き継ぎ、混乱の2023年のかじ取りをすることになっています。

グルーバルサウスの主として途上国のまとめを行いつつ、クワッドの一翼として欧米豪日とも調整し、同時に中ロとも協議するという見事な立ち位置にあることがお分かりになるかと思います。

3月1日から2日に開催されているG20外相会合ではすでに困難なかじ取りを強いられているようですが、混乱する国際経済への対応、パンデミックへの対応、国際安全保障問題への対応、そして気候変動に代表されるplanetary healthについての対応といった多方面にわたる議題に対して意見調整を行っている姿が見えてきます(今年G7議長国を務める日本の林外相がどうしてこのような重要な場を欠席させられるのかは、私には非常に不可解ですが、これについてはこれ以上のコメントは行いません)。

ではそのインドがまとめなくてはならない国際情勢では、今、どのようなせめぎあいが行われているのでしょうか?

中国が示したロシアの面子を保てるギリギリの内容の和平仲介案

一つ目の特徴は【目覚めた中国政府と中国の台頭】です。

王毅国務委員(外交トップ)によって両国に示された和平仲介案の詳細については伝えられていませんが、ロシアもウクライナも拒否することなく、議論のテーブルに乗せられています。

ロシアに対しては、習近平国家主席の訪ロというカードをちらつかせながら、中国による仲介案を議論のベースとして用い、ウクライナとの直接対話につなげることを迫っていますが、プーチン大統領をはじめ、ロシア政府内の受けとりはさほど悪くはないようです。あるロシア政府高官の表現を借りると「ロシアにとってはメンツを保つことが出来るぎりぎりの内容と思われる」とのことでした。

ではウクライナ側はどうでしょうか?ゼレンスキー大統領の発言にもあったように、表面的には歓迎の雰囲気を示し、最低限の敬意を中国政府、特に習近平国家主席に対して示しているように見えます。

そして、まだ実際には中国側から正式オファーは受けていないにもかかわらず、習氏との直接会談の用意があると中国政府にラブコールを送っていますが、漏れ伝えられる内容によると、ウクライナに対しても習近平国家主席との会談、そして習近平国家主席によるロシア・ウクライナの仲介というカードが王毅氏から示されたようです。

ただ、ゼレンスキー大統領としては、欧米からの継続的な軍事支援こそが抗戦の命綱であるため、欧米諸国とその仲間たちから疑いの目を向けられることは避けたいと考えたのか、「ロシアのウクライナ領からの完全撤退を伴わない内容は受け入れない」と発言したり、「中国がロシアに軍事支援をしないことが最低条件」と述べたりして、気を遣っているようにも見えます。

その“気遣い”を後押しするかのように、アメリカのブリンケン国務長官やNATOのストルテンベルグ事務局長が相次いで「ロシアをサポートしながら、和平案を示す中国は信用されていない」と非難し、即座に中国案の受け入れを拒否していますが、ここで注意したいのは、アメリカもNATOもこの戦争の当事者ではないという事実です。援護射撃は出来ても、発言権はないということになります。

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