プーチンにも習近平にも怯まず。ウクライナ戦争後のカギ握る大国の名前

 

中国がバイデン政権に対して仕掛けた取引

それを見透かしながら、中国政府は着々と支持固めと反ロシア・反中国の結束を崩す動きをしています。

例えば、2月28日から3月2日には、ウクライナとロシアの隣国であり、一貫してロシア側についているベラルーシのルカシェンコ大統領を北京に招き、習近平国家主席自らが仲介案を説明し、ベラルーシからのフルサポートを得ています。その見返りは、ロシアとセットで国際経済からの締め出しを食らっている現状に対して、中国からの支援と経済的な支援の拡大と強化の約束です。

ベラルーシをまず自らの側にぐっと寄せておくことで、プーチン大統領とゼレンスキー双方に対して中国の立ち位置を示すこともできますが、これは同時に対中包囲網の一翼をなす欧州各国に対するメッセージでもあると思われます。

北京曰く、現在、4月をめどにマクロン大統領の北京訪問をフランス政府と調整し、今年の前半をめどにフォンデアライデン欧州委員長とミシェル欧州大統領の訪中への働きかけを行う中、欧州諸国が制裁対象としているベラルーシにも影響力を及ぼすことが出来ることを明示して、欧州の中国離れを食い止めたいとの思惑があるようです。

そしてこれは欧州側の思惑にも適っているようで、見方によっては中国による欧米の切り離し作戦とみることもできますが、もしそうであれば、ロシア・プーチン大統領への中国からの貸しとなりうる企てに繋がる可能性もあります。

別の観点があると思われるのは、アメリカのバイデン政権への揺さぶりです。アメリカは現在、欧州諸国と共にロシア・ベラルーシをセットとして制裁を課していますが、ロシア(とベラルーシ)に戦争を止めさせる効果はなく、2024年に大統領選挙を控え、ウクライナ問題への解決という成果を欲するバイデン政権および民主党に対しての取引にも見えてきます。

「もし中国のハイテク産業に対して講じている制裁措置を緩和するのであれば、ウクライナ問題で米国が成果を収められるように協力してあげてもいいよ」といった感じでしょうか?

バイデンのキーウ訪問に見え隠れするメッセージ

ではアメリカ政府側はどのように動こうとしているのでしょうか?

先述の通り、中国の仲介案に対しては即座に拒否の姿勢を示してはいますが、インドで開催中のG20外相会合において、ブリンケン国務長官と秦剛外相が協議をしているとのことで、何らかの動きが出てくるかもしれません。

とはいえ、中国頼みというのはバイデン政権としては許すことはできないでしょうから、もちろん独自の行動を通じてロシアに圧力をかけ、何とかウクライナ問題で成果を挙げようとしています。

バイデン大統領によるキーウ訪問やイエレン財務長官によるキーウ訪問を通じて、アメリカがウクライナの戦いに寄り添う姿勢を示しているのがそうだと言えますが、これには多方向に向けたメッセージが見え隠れするように思います。

1つはアメリカ議会、特に共和党が多数派でかつ予算権を握る議会下院において、ウクライナ支援拡大路線を見直す必要性が叫ばれていますが、そのような流れに対する牽制と取ることが出来ます。

下院共和党からは、ロシアに対して課す経済制裁の結果、世界経済を混乱させ、アメリカ経済に対してもインフレ圧力をかけアメリカ経済を傷つけたとの非難があがり、「今は国内経済の立て直しが優先であり、ウクライナへの際限なき支援は見直すべき」との批判がでていることへのカウンターパンチと言えます。

ただし、このカウンターパンチは、ウクライナのためという側面よりも、2024年の大統領選挙を有利に戦うための素地づくりという性格が強いと思われます。

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