徴用工「解決案」に反発の声も。なぜ日韓関係は侮蔑を伴うほどに悪化したのか?

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3月6日、徴用工を巡る問題の解決策を発表した韓国政府。岸田首相もすぐさま「評価する」と述べるなど、戦後最悪と言われた日韓関係の改善が期待されますが、この動きは北東アジアの安定にどの程度寄与するのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、同地域の安定は「まだまだ難しいテーマ」と断言。その上で、今後北東アジアにおける様々な事態に対処してゆくために、我々が考えておくべき「2点の問題」について議論を展開しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年3月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

韓国側の徴用工問題「解決策」に反発も。朝鮮半島外交における2つの留意点

先日、このメルマガでも紹介した松川るい議員による、保守派知識人との論戦では「新日韓合意」についての交渉が進んでいることが示されていました。「いわゆる徴用工問題」と「貿易における最恵国待遇の回復」をセットで解決するという案で、松川議員はユン政権が続くこの期間に解決すべきと強く力説していたのでした。

これに対して、保守派の世論は「韓国は合意してもひっくり返す国だから騙されてはいけない」という「いつもの」言説をタテに反対を繰り返していました。この問題ですが、ここへ来て水面下ではなく、正式な動きとして浮上しており、まずは韓国側から「いわゆる徴用工問題」は韓国サイドの財団が補償するというスキームが提案されるに至りました。

通商における措置の回復についても、あくまで岸田政権としては「別問題」という建前を守りつつ、こちらも解決の動きが出てきています。日本の保守派からは、依然として「またゴールポストが動く懸念がある」とか「韓国のスキームを認めると徴用問題の責任を認めることになる」という批判が出ていますが、今回はこのパッケージで進めるのが妥当と思います。

この「新日韓合意(のたたき台)」ですが、直接的な理由は北朝鮮による核ミサイル開発の加速という問題があります。日韓離反工作に対して、いつまでも好きにさせて置くわけには行かないということです。更に直近の問題としては、13日から予定されている大規模な米韓軍事演習の日程があります。

米国としては、北のミサイルの脅威に対処するという用意に加えて、とにかく米韓演習が象徴するような「アメリカとしてリスクを取って北東アジアの安定に貢献」しているという意識があると思います。これに対して、「同盟国であるはずの日本と韓国が3世代も前の問題で舌戦に興奮している」という状況が続くようですと、「面倒くさい」のでこの地域におけるコミットから逃亡しようという動機になりかねません。

少なくともバイデン=ハリス政権や、共和党のヘイリーなどは、「そうではない」という立場であり、だからこその合意が求められるということです。この件については、それ以上でも以下でもないと思いますが、仮に日韓が合意に達したとして、また双方のナショナリストが自己満足のための妨害を止めたとしても、韓半島の安定というのはまだまだ難しいテーマだと思います。

司馬遼太郎も言及していた「台湾海峡問題」の最適解

北東アジアの安定を確保するために、直面する課題としては2つあります。この2つの問題があるからこそ、恥ずかしいことではありますが、21世紀に入って四半世紀に迫ろうという現在、北東アジアでは「まだ冷戦構造がある」わけです。具体的には台湾海峡と38度線の問題です。

このうち、台湾に関しては亡くなった司馬遼太郎氏の遺言にもあったように、可能な限り現状を引っ張るというのが最適解と思います。この考え方を変更する理由も、またその場合の代替策も、現時点では思い当たりません。

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