毎年のように「去年の●倍」という脅し文句とともに報じられ、くしゃみや鼻水が止まらなくなる、やっかいなスギ花粉症。そんな花粉症が「糖質制限食」によって改善されたという読者からの報告を伝えるのは、メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』の著者で糖尿病専門医で糖質制限の提唱者としても知られる江部康二先生。江部先生は今回、読者からの質問に答える形で、糖質制限によって花粉症やインフルエンザの罹患もなくなったという報告について検証しています。
糖質制限食で「花粉症」の症状が無くなったのですが糖質制限の効果でしょうか?
Question
糖質制限を始めて2ヶ月が経過致します。私が主患ですが、中学三年の娘のことでご報告したいことがあります。
娘は、生後間もなく乳児湿疹が悪化し、痒みが酷く掻きむしることにより肌が割れ、身体もパンパンに腫れておりました。血液検査のアレルギー数値は、それは凄いものでした。
当時、病院を何箇所も渡りましたが改善せず、北里の東洋医学会研究所の漢方医に通院を開始しました。
漢方を処方頂き、煎じて私が服用し、系母乳投与致しました。1月に初めて受診し、3月頃より、娘の痒みが治り始め、それから3歳近くまで漢方とお付き合い致しました。現在肌は白く、綺麗です。
ただし、中学に入ってから、時折熱を出したり、咳が止まらず次第に喘息のような症状があらわれ、喘息を止める吸引薬とシールを持ち歩くようになりました。
私が糖質制限を行うようになり、家族も従って糖質低めのタンパク質をしっかりとる食事をするようになってから、娘は風邪もひかず、毎年かかっていたインフルエンザにもかからなくなりました。
花粉の時期になっても、咳も鼻水もないのです。血液検査では、アレルギー反応の数値は改善されていないにもかかわらずです。
この変化に驚いています。これが糖質制限の効果でしょうか?
江部先生からの回答
赤ちゃんがアトピーでも、煎じ薬は到底飲めません。
そんなときお母さんに煎じ薬を飲んでいただいて、母乳からの漢方効果を期待するというやり方は、なかなかリーズナブルと思います。高雄病院でも、ときにそうすることがあります。
あるいは、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんには漢方の浴剤を処方することもあります。ともあれ、娘さんのアトピーが改善して良かったです。
糖質制限食実践で、花粉症や気管支喘息がでなくなったのも素晴らしいですね。
近年の糖尿病関係の話題として、『空腹時血糖値と食後高血糖値の差(ブドウ糖スパイク)が大きいほど、リアルタイムに大血管の内皮が傷害されて動脈硬化になりやすく、将来心筋梗塞の危険性が高まる』という説が有力となっています。
糖尿病の人は、当然、ブドウ糖スパイクが大きいわけです。
一方糖尿病がない人でも、糖質を食べれば、糖尿病の人に比べれば小さいとはいえ、食後の血糖値が上昇して大量のインスリンが分泌されます。
私は、この小さなブドウ糖スパイクを、『ブドウ糖ミニスパイク』と呼んでいます。
現代の普通の食生活では、毎日3~5回、食事や間食のたびに、糖質摂取によるブドウ糖ミニスパイクとインスリンの大量分泌が生じます。
特に精製炭水化物を一人前摂取したら、追加分泌インスリンは基礎分泌の10倍~30倍と大量に出ます。
これは食後高血糖を防ぐために救急車が出動したようなもので、本来非常事態なのです。
人類の進化の歴史で、狩猟・採集時代の700万年間は、穀物摂取がほとんどないので、『ブドウ糖ミニスパイク』もインスリンの過剰分泌もありませんでした。
このブドウ糖ミニスパイクとインスリンの過剰分泌が、生体の恒常性をかく乱してホメオスタシスを崩し、アレルギー疾患を悪化させたり、将来の生活習慣病のもととなります。
過去世界中にいろんな食事療法がありましたが、経験的に有効とされているものは、玄米菜食、ゲルソン療法、甲田療法など、基本的にブドウ糖ミニスパイクが比較的少ないという一点で一致しています。
特に生野菜と生玄米粉だけという甲田療法では、ブドウ糖ミニスパイクは極めて少ないです。
私は現在、世界に氾濫する生活習慣病の元凶は、精製炭水化物やジャンクフードによるグルコースミニスパイクとインスリン過剰分泌と考えています。
糖質制限食により、グルコースミニスパイクとインスリン過剰分泌がなくなり、生体はホメオスタシスを取り戻し、自然治癒力も回復し高まり、アレルギー症状を始めとして様々な生活習慣病の症状が改善します。
スーパー糖質制限食なら、お魚、お肉など美味しいものをたくさん食べても、「甲田療法」よりも、さらにブドウ糖ミニスパイクが少ないのです。
娘さんも、糖質を減らすことで、アレルギーなど生活習慣病の悪循環が断ち切れたのだと思います。
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