ウクライナ政府も激怒。露を利する米国「国家機密」漏えいの衝撃度

smd20230414
 

世界を大きく揺るがせている、アメリカ国防総省の機密情報漏洩。捜査当局は21歳の空軍州兵を逮捕しましたが、国際社会の混乱が収まる様子はありません。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、この情報リーク事件が各国に与える影響を解説。殊にロシアと戦うウクライナが被るダメージについて詳説しています。

米国の安全保障に関する「国家機密」リーク事件が意味するもの。ウクライナ戦線の“分岐点”となるのか?

「これはすべての国にとって悪いニュースだ。ウクライナにとっても、アメリカにとっても、どうやってロシアとの戦争を遂行し、これからどのような戦略を進めるのかをリークされたのだから。そして欧米諸国とその仲間たち(同盟国)にとっても最悪のニュースだろう」

これはアメリカの機密漏洩を受け、OSCE(欧州安全保障協力機構)の高官が漏らした一言です。

確か4月11日付のThe Financial Timesだったかと思いますが、事細かにリークされた内容を報じ、それに対して詳細な分析も加えていました。今回の機密漏洩はアメリカ政府にとっては大ショックともいえ、現在、リークで触れられていた各国はもちろん、同盟国に対しての説明に追われています。

何よりも現在、遂行中のウクライナ支援、特に今月末には開始されると言われているウクライナによる対ロ反転攻勢の戦略や装備などの重要な情報が含まれていたことで、ウクライナとしては大きな戦略の変更を迫られることになりそうです。

表向きウクライナ政府は「戦略的な変更はなく、すべて予定通りに遂行する」と言ってはいますが、実際には「なんてことをしてくれたんだ」とアメリカ政府に対して怒り心頭のようです(ブリンケン国務長官がクレバ外相に謝罪したようですが、信頼回復には至っていないようです)。

とはいえ、アメリカは対ロ戦争を支える最大の支援国でもあり、今後の反転攻勢の趨勢を左右する武器弾薬を供与してくれるはアメリカ政府であることも事実ですので、これから約10日から2週間の間に反転攻勢の戦略や配備などについてアメリカおよびNATOと密接に協議して、それなりの変更を加える必要があるものと思われます。

ちなみに今回のリークの中にはいくつか直接的にショッキングな内容もありました。特に【アメリカ政府が同盟国・友好国に対する諜報活動を行っていた】ことを示唆する内容は、エドワード・スノーデン氏によるリークに次ぐ規模と言われており、それは国際情勢の安定を揺るがしており、アメリカ政府も対応に追われる事態になっています。

アメリカ政府も「一部漏洩後に改ざんされていると思われる内容もあるが、今回リークされた内容は概ね事実である」と認め、事態の収束に尽力していますが、なかなか容易に収まりそうにありません。

例えば「エジプト政府がロシアに対して4万発のロケット弾を供与することを検討している」という内容は、これまで度々囁かれてきたエジプトによる武器弾薬の供与という噂の裏付けとなるものと捉えることができるため、これはアメリカ政府もエジプト政府も大いに焦ることになりました。

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