反転攻勢の戦略見直しか。ウクライナが被るダメージ
ではロシアとの戦争を戦うウクライナへの影響はどうでしょうか?
結論から申し上げますと、それなりの影響は否めないと考えます。その理由の一つ目は【反転攻勢の戦略の総見直しが必要になる】からです。
ウクライナ政府の報道官は「戦略に変更はない」と発言していますが、今回のリーク内容には「4月30日ごろを目途に反転攻勢に必要とされる欧米の最新型の戦車(レオパルト2やアブラハムなど)からなる態勢が整う」「ポーランドから供与されたミグ29に改造を施し、NATOの射程200キロメートル超のミサイルを搭載可能にすること」「アメリカより射程150キロメートル超のロケット弾であるGLSDB(ハイマース150)が供与されること」「対ロ反転攻勢はウクライナ南部のロシア軍支配地域、特にハルキウやマリウポリ周辺からスタートし、クリミア半島への攻勢につなげる方針であること(ロシア本土とクリミア半島を切り離すこと)」などが含まれており、その情報が今回ロシアとその仲間たちにも伝わったことは、ウクライナにとっては望ましくない状況を生み出しています。
二つ目の理由は【ウクライナの武器弾薬のストックが枯渇している】との情報が流れたことです。
ニュースでは欧米各国からの武器弾薬の供与を通じ、ウクライナの抗戦能力は維持されていると言われていますが、実際のところ、ロシアと比較して、武器弾薬の保持数の割合は10対1、つまりウクライナはロシアの10分の1ほどしか持っていないというデータが出ています。
質に関しては、2014年以降にNATOから供与された兵器の方が優れているようですが、それを使いきる能力(装備が持つ能力をフルに発揮するスキル)がまだ備わっていないことと、ハイマースなどの最新兵器が、今回の戦争において、ロシア軍側に接収されているとの情報もあり、それを今、ウクライナに対して逆に使用されているとの分析も上がってきています。
実情については明らかにはなっていないので何とも言えないところですが、一つ言えることは、ウクライナの武器弾薬の保有量・残量はあまり楽観視できるレベルにはないと思われます。
それゆえに欧米各国からの支援が急がれるわけですが、提供される武器は、ウクライナが要請しているものよりは能力・性能が劣るものであり、かつ供与のスピードも遅いということです。
またアメリカの戦略的重要性が、再度、台湾情勢への対応と中国への対抗に置かれており、ウクライナが占める戦略的な重要性が低下してきているという内容も、実は今回のリークには含まれていたようです。
もしそれがガセネタでなければ…アメリカ議会が合意した対ウクライナ支援パッケージの期限がくる8月末には、支援が停止するという事態も予想されます。
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