プリゴジンとは
プリゴジンは1961年、レニングラード(今のサンクト・ぺテルブルグ)で生まれました。
1980年代は、強盗、詐欺などの容疑で、ほとんどの期間刑務所にいたそうです。1990年、ホットドック販売を開始し大成功。その金を元手に、食品チェーン、カジノ、水上レストランなどを設立していきます。
プリゴジンの水上レストラン「ニューアイランド」は評判がよく、プーチンが、フランスのシラク大統領や、アメリカのブッシュ大統領を連れてくるほどになりました。それで、今に至るまで、プリゴジンのあだ名は、「プーチンのシェフ」(ポーヴァル・プーティナ)です。
プリコジンは、プーチンとの個人的な関係をフル活用して富を蓄積していきます。プリコジンの会社は、学食やロシア軍に食事を提供する権利を獲得して、大儲けしました。
しかし、プリコジンを有名にしたのは、民間軍事会社「ワグネル」の設立者としてです。彼が「ワグネル」を設立したのは2014年。この年の3月、ロシアはウクライナからクリミアを奪いました。4月になると、ルガンスク、ドネツクの親ロシア派が独立を宣言。ウクライナ政府は当然これを容認せず、内戦が勃発しました。プリゴジンはこの年、ワグネルを作り、ルガンスク、ドネツクに戦闘員を送り込んだのです。もちろん、プーチンの命令で作ったに違いありません。
ちなみにロシアで民間軍事会社は違法です。そのため、ウクライナ戦争がはじまるまで、大っぴらにその存在が語られることはありませんでした。しかし、ワグネルはその後、中南米やアフリカ諸国、シリアなどにも傭兵を送るようになった。それで、ロシア研究者や世界中の諜報機関は、その存在を知っていたのです。
2022年2月24日、ロシアがウクライナ侵攻を開始。ロシアの国営メディアは、「2~3日で首都キーウを陥落させて特別軍事作戦は終わる!」とはしゃいでいた。ところが、戦争はプーチンの予想を裏切って長期化し、世界中の人が、「ロシア軍は軍事力世界2位というが、案外弱い」ということを知ったのです。
ロシアの正規軍はだらしない。そんな中、ウクライナ軍を苦しめているのが、プリゴジン率いる「ワグネル」です。
プリゴジンは、正規軍のだらしなさに対する憤りと、自分が大活躍しているという驕りから、次第に増長するようになっていきました。昨年の11月には、「ゼレンスキーは現在ロシアに敵対する国の大統領だが、ゼレンスキーは強く、自信があり、現実的で、いいヤツだ」と発言しています。これは、ロシアの「公式見解」とは全然違います。
ロシア政府や国営メディアは、ゼレンスキーについて、「ネオナチの麻薬中毒者」と定義している。ところが、プリゴジンは、「強く、自信があり、現実的で、いい奴」といっている。この発言から、プリゴジンが、プーチンへの恐怖心を失っていることがわかります。
戦場で活躍するプリゴジンとワグネル。その一方で、ロシア軍の弱さとだらしなさを批判するプリゴジン。ロシアの支配者層は、プリゴジンを恐れ、疎ましく思っているようです。そして、彼からバカにされているロシア軍との関係も、また悪いのです。









