中国がスーダンへ特使派遣の情報も。内戦の仲介に乗り出す習近平の目論見

Khartoum,,Sudan,-,March,6,,2019:,View,Of,A,Stree
 

国軍と準軍事組織それぞれのトップの権力争いが激化し、内戦状態にあるスーダン。両者とも一歩も引く気がないと伝えられ、停戦は絶望視されているのが現状です。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、この内戦が地域全体に飛び火する危険性を指摘。さらに独自に掴んだという、中国が両者の仲介に乗り出すという情報を紹介するとともに、その裏にある習近平政権の「狙い」を考察しています。

中国が調停役に名乗りか。歯止めの利かないスーダン情勢でも見せたい実力

「このまま戦いを続ければ、絶対に我々の側が勝利し、栄光を得る」

これはスーダンで戦争を繰り広げる国軍・そしてRSF(即応支援部隊)双方が、調停の場で堂々と主張している内容です。

若干の誇張と意地の張り合いの兆候があることは否めませんが、今回、当事者となっている両方の軍事組織は一歩も譲歩するつもりはないようです。

時折72時間の停戦合意ができるものの、国内の外国人の退避のために用意したはずの72時間の間、スーダン各地で戦争は継続され、ほぼ無差別な攻撃が行われています。

報じられている通り、これまでに少なくとも500人が死亡し、その大部分が民間人であるとされ、その中には、本来ターゲットになってはいけない国連職員3名(WFP 世界食糧計画)も含まれています。

それに加え、病院や学校などが次々と標的にされ、国内からは飲み水が消え、停電が常時起きており、戦闘から逃れることが出来ても、生きるためのbasic needsが奪われ、近年、まれにみる人道危機に瀕しているとの報告を受けています。

ニュースでも報じられているように、在留日本人を含む外国人はすでに各国の協力もあり、ほとんどが国外への退避を終えていますが、スーダンの人々については、差し迫る戦火と対峙しつつ、大多数がスーダン国内に国内避難民(Internally Displaced People)として留まっています。

経済的・物理的に余裕がある家族については、隣国への退避を決行しているものもありますが、それはそれで、ただでさえ不安定な東アフリカ情勢へのさらなる緊張要因になりつつあり、それがまた新たな火種に発展する恐れがあります。

そして一気に悪化する治安状況を受け、すでに国内数か所でPrison break(脱獄)が大量発生し、約2万人の囚人が街に出た結果、略奪と殺戮が横行し、そこにRSFなどの蛮行も加わってもう歯止めが効かない状況になっているようです。

スーダン政府にはかつて仕事を共にした仲間がたくさん働いていますが、家族をいち早く国外に逃がし、自らはハルツームに残って戦っているようですが、ぽつりぽつりと連絡が途絶えていく状況に言葉が見つかりません。

今回の内戦は、決して国内で治まることはなく、早くも地域安全保障にとっての大きな問題・脅威に発展しています。

スーダンを軸に見た場合、隣国はかつての同胞である南スーダン、そしてティグレイ紛争以降、さらに対立が深まるエチオピア、そのお隣のエリトリアなどがありますが、この地域は実は国際情勢の勢力圏争いの縮図のような場になっています。

今回の舞台、スーダンについては、アメリカ政府がかねてより経済的・軍事的に肩入れしており、東アフリカと中東地域を監視する情報の主力拠点になっています。それゆえに、今回の内戦についても、勃発からすぐにアメリカのインテリジェンスからの情報が流され、同盟国に共有されていますし、無人偵察機をスーダン上空に飛ばし、情報収集を許可されているという状況があります。

それに加え、アメリカの支援は、今回戦う国軍とRSF双方に及んできたことから、他の紛争に比べ、ペンタゴンや国務省曰く、当事者意識が強いそうです。ゆえに国軍側とRSF側双方にアクセスでき、今回の紛争とその原因になった政治的な権力・主導権争いの様子は掴んでいるようです。

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