中国がスーダンへ特使派遣の情報も。内戦の仲介に乗り出す習近平の目論見

 

国軍とRSFの仲介に乗り出す習近平の思惑

そんな中、報じられていませんが、どうも中国政府が“特使”をハルツームに派遣し、国軍とRSFの仲介に乗り出すという情報が入ってきました。

真偽のほどは分かりませんが、アメリカ主導の調停が不発に終わったのを見て、今度は同じサウジアラビアと組んで調停に乗り出すようです。その際、スーダンの内戦に対しての調停のみならず、どうもすでに影響力を確立し、国の存続に向けた首根っこを掴んでいるエチオピアをはじめとする周辺国も巻き込む枠組み作りを提唱する方向だと聞きました。

内容については慎重に吟味したいと思いますが、方向性としては、個人的には望ましいアプローチだと考えています。

その中国ですが、電話会談という形式ではありますが、習近平国家主席とゼレンスキー大統領の会談を、ロシアによるウクライナ侵攻以降初めて行い、存在感をアピールして、一度は止まりかけた和平トラックを再スタートさせることを世界に見せつけました。

すでにロシアとは、最高レベルでの協議が行われ、仲介の依頼を取り付けているため、今回のゼレンスキー大統領との会談を受け、今度は実務レベルでの3者和平プロセスの基盤はそろったと考えられるため、中国としては、習近平国家主席絡みでの次の国際的な紛争の調停案件を探しているようです。

候補としてはミャンマー内戦も高い優先度にあるようですが、これは今、インドとタイが主導するプロセスが走っているため、こちらを尊重する構えを見せていますので、しばらくは付かず離れずの状態が続くと予想します。

そうなると今ホットイシューはスーダン情勢であり、高まる東アフリカ地域の緊張緩和に向けた動きとなるのでしょう。

このメルマガを書いているのと並行して、スーダンについての調停に関する問い合わせがどんどん入ってきていますが、多くの懸念はスーダン情勢がこのまま激化し、紛争が地域に拡大した場合、戦火が各地に飛び火し、収まっていた内戦・国内・地域内の紛争の種が火を噴きかねず、絶対的な戦力を有する欧米諸国がウクライナ支援合戦と対ロ“戦争”に引きずり込まれている状態ゆえに、その延焼を防ぐ手立ても力もないと思われます。

ここでもちょっとトルコや中国が面白い動きを始めていますが、トルコについては、大統領選を控え、おまけにエルドアン大統領に病気の噂まである中、どこまで国際情勢に関与できるかは分かりません。

しかし、話が中国となると分かりませんし、実はグローバル・サウスの国々を束ねるインドも(実はアフリカ大陸にはインド系の国民も多いこともあり)介入に向けた準備を始めているそうです。

スーダン情勢がもう歯止めの利かない状況に陥っている中、どのようにしてまず当事者たちを協議のテーブルに就かせるか。

非常に困難な任務が目前に控えています。

以上、国際情勢の裏側でした。

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