中国がスーダンへ特使派遣の情報も。内戦の仲介に乗り出す習近平の目論見

 

もはや成立が困難となった国連ベースでの調停

これにより見えてくるのが、国連ベースでの調停は成立しないということです。

欧米諸国、中東諸国に加え、中国もロシアも調停・仲裁に関与することに関心を表明していますが、それぞれバラバラに行われており、正直、効果はまったくないと考えます。

そしてスーダン内戦の背後で再度燻りだしたのが、隣国エチオピアによるスーダン侵攻の危険性です。

以前より両国は国境線周辺地帯で小競り合いを繰り返し、実はずっと戦争状態であることから、エチオピアのアビー首相が今回の紛争の混乱に乗じて、スーダンとの係争に決着をつけようとしているという情報が入ってきました。

エチオピアと言えば、ここ2年程、北部ティグレイ州との内戦状態にありますが、紛争の長期化に合わせて、その戦火がティグレイ州から周辺地域へと飛び火し、元々多民族多言語国家である非常にデリケートな統治バランスにヒビが入り始め、すでに統合は修復不可能と言われていますが、アビー政権は今回の対スーダンへの攻撃を通じて、国内の統合のための材料にしようと目論んでいるという話もあります。

ちなみにティグレイ族の避難先はスーダンが最大で、スーダン政府もこれまで(アメリカ政府のバックアップを受けて)ティグレイ族の保護を訴え、エチオピア政府を激しく非難してきたことから、エチオピア政府にとってスーダン政府は憎きティグレイ族を匿う敵国との認識のようで、今回の混乱を受けても国境線を閉じ、スーダン人のエチオピアへの避難を受け入れていません(それどころか追い返したり、攻撃を加えたりしているという情報もあります)。

現在は、国軍とRSFの間での激しい内戦ですが、今後、これが対エチオピア、そしてその“盟友であり、かつての敵”のエリトリア、南スーダンを巻き込み、場合によってはケニアやタンザニア、エジプト、そして2つのコンゴも交えた大規模な地域戦争に発展する恐れが出てきています。

スーダン問題の国連事務総長特別代表が国連安保理に対してハルツームから報告したように、国内には紛争調停・停戦に向けた機運は存在しておらず、双方ともにとことん戦い、それぞれに勝利を信じているため明るい光は見えてきていないようです。

スーダンを核として東アフリカ地域が混乱を極め、それが中央アフリカや中東にも波及するようなことがあった場合、再度、イスラム国(ISIL)が世界を恐怖に陥れたような究極の混乱を招き入れることにもつながりかねません。

そのような状況を恐れてか、エジプトは軍の待機態勢の危機レベルを上げたとのことですし、エチオピアはティグレイ対策をしつつ、じわじわと政府軍をスーダン国境に移している模様です。

中東諸国については、中国の仲介の成果なのか、イランとサウジアラビア王国の和解を受け、一気に緊張が緩み、イエメン内戦も解決に向けた協議が始まっていることから、即時に戦場になることもないでしょうし、ましてや海を越えて対岸の火事に参戦するとも思えませんので、一旦、watchlistからは外してよいかと思いますが、東アフリカ地域については非常にきな臭い雰囲気が漂ってきているように思います。

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