ブッシュ・オバマ両時代の停滞の背景にあるもの
オバマは、骨の髄まで自由経済の信者ですから、そこに合理性がある限り、不況脱却を優先し、あえてリストラも、空洞化も止めなかったのでした。ですから、猛烈な反発を左右から買っていたのですが、オバマも、そして多くの「大人や都市の世論」はそこに危機感は持っていなかったのです。そんな中で、漠然とした「方向性の喪失」のようなことが起きていました。
今から考えてみると、ブッシュ時代の「停滞」の背景には、「どうして巨額なカネと米兵の生命を、意味不明な中東や中央アジアのために犠牲にする必要があるのか」という今に続く「孤立主義からの厭戦論」が相当なマグマとして溜まっていたのです。
また、オバマの時代の停滞には「経済合理性の名の下に、多国籍企業とエリートだけが利益を得るのはおかしい」というマグマが溜まって行ったわけです。これは、現在のトランプ的な孤立主義と、AOCやサンダース流の左派に連なるエネルギーとなっていたのでした。
そう考えてみると、現在のアメリカが直面している停滞感の奥には、何らかの予兆というものがありそうにも思われます。では、それは何なのでしょうか?
色々と考えてみたのですが、1つには絞れそうにありません。今回は、現在のアメリカを包んでいる「モヤモヤ」の正体について、とりあえず列挙して考えてみようと思います。
80歳のバイデン、78歳のトランプの居座りに貯まる不満
1番目は「世代」です。次回の大統領選に出馬を宣言したバイデンは既に80歳。対抗意識を燃やしているとされるトランプは78歳と、とにかく高齢者が居座っているという風潮には、若い世代(ミレニアルからZまで)には相当に不満が溜まっているようです。
先週、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)が報じたところでは、全有権者の70%、そして民主党支持者の中でも51%が、バイデンの再選出馬に反対しており、その理由は「高齢」だとしています。この種の世論調査は、昨年から色々なメディアや団体が実施していますが、コンスタントに同じような結果が出ています。これは深刻です。
これに対して民主党の側では、バイデン陣営としては「万が一の代替はハリス」と決めているようで、例えばバイデンの立候補表明動画には、ハリスがサブリミナル映像のように何度も登場しており、まるで他の選択は受け付けないかのようです。ですが、ハリスは移民問題の担当として与野党から「ダメ」を出されていますし、表面は人権派で本音は市場経済論者(現実的でいいセットだと思うのですが)という信念の部分が単純な左派からは憎まれてもいます。
とにかく、民主党内は、バイデンの健康問題などが露呈して、改めて党内で一から候補を決め直すというプロセスが必要で、そうしないと党の勢いも今ひとつとなりそうなのですが、その気配はありません。
そんなわけで、高齢批判というトレンドがある中では、共和党の場合、ロン・デサンティス・フロリダ州知事が44歳と、この問題では非常に有利な位置につけています。ですが、2月に自伝を出し、4月には訪日して出馬の機運を見極めているようではあるのですが、未だに動きがありません。これは、予備選において序盤に走ってしまうと失速するというジンクスを気にしているのと、やはりトランプの各種裁判の行方を睨んでいるのだと思われます。
そのジンクスということでは、87年に民主党で勢いのあったゲーリー・ハート議員が失速した例、同じく2004氏の民主党のハワード・ディーンが先行しながら「絶叫動画(内容は全く悪くないのですが)」だけで失速した例が典型です。また、共和党の場合も、2016年に本命と思われたジェブ・ブッシュがトランプの攻勢の前に崩れ去った例など、とにかくデサンティスは慎重になっているようです。
そんな中で、現時点では若い有権者の間には「自分たちの代表がいない」という不満が蓄積しているようです。
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