保守層を取り込む戦略は誤り。躍進の「維新」が図るべき自民との区別化

2023.05.14
 

地域が世界と独自のネットワークを築く。維新が描くべき「新しい国家像」

私はすでに、維新に対してさまざまな提言をしてきた。まず、自民党とはまったく異なる「国家像」を長期構想として打ち出すこと。既に、道州制による「地域主権」は打ち出している。それならば、維新が「一院制」を主張するのはおかしい。

道州制のような分権が進んだ「連邦国家」は、すべて「二院制」だからだ。その上院は、「ドイツ連邦参議院」のように知事など地方政府の代表が国会議員を兼務する国がある。維新も、憲法改正して参院を「連邦国家型上院」に改革することを訴えたらどうか。

「地方主権」では、アジアの都市と日本の各地域の主要都市が直接結びつく経済圏の構築を構想してはどうか。大阪や福岡が、東京に次ぐ第二、第三の国際金融市場を持つ。そして、上海、新セン、大連、台北、香港、シンガポール、ジャカルタなどと直接経済圏を作る。

ウクライナ戦争が終結し、将来北朝鮮が民主化するようなことがあれば、新潟、金沢、札幌などがロシア・北朝鮮、韓国などと環日本海経済圏を構築するのもいいだろう。

要するに、地域が東京の顔色ばかりを伺う中央集権でない、地方主権で、それぞれの地域の特色を生かして成長著しいアジアなどの都市と独自のネットワークを築き経済・社会を発展するモデルを構築することだ。

維新の中心地である大阪は、IRを誘致することが決定した。IRはカジノばかりが強調されるが、国際会議場が設けられて、さまざまな国際会議が招致される予定だ。そして、大阪は万国博覧会を開催する。これらの機会を、地域が世界と独自のネットワークを築く好機とすべきだろう。

要するに、小さな島の中に固まって衰退を待つだけの国になるのではなく、成長著しいアジアの一部となって、存在感を発揮していく「新しい国家像」を描くことである。

image by: 日本維新の会 - Home | Facebook

上久保誠人

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

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