もっともASEANにとっていまだ最大の課題はミャンマー問題だ。ここではなかなか進展もみえてこない。だが興味深いのは、そのミャンマー問題での議長国・インドネシアのジョコ・ウィドド大統領の発言だ。
「われわれの信頼性が問われているいまこそ『特定の誰かを排除しない』というASEANの包摂性を貫くべきである」
ASEANのこうした考え方は、「一方的に主張を押し付けるメガホン外交ではなくミャンマー国内で話し合いが進むことを望む」とか、「関与することと相手を認めることは別」といった発言からも強く伝わってくる。聞き方によっては、仲間か否かを分け、一度排除の対象になれば強い制裁で屈服させようとするアメリカのやり方をけん制しているようでもある。
日本ではよくASEANが「中国経済に屈した」と報じられるが、包摂性がASEANの特徴だ。逆に経済的な関係が深い中国と、あえて離れるメリットは何かと問われれば、ASEANはかえって説明に困るだろう。実際、少しずつ対中国で現実的な対応をしようとする動きは、アメリカの同盟国やパートナー国の間にも広がりつつある。
例えば、ASEAN首脳会議が閉幕した同じ日に北京に到着したオーストラリアのドン・ファレル貿易・観光相の動きだ──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年5月14日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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