睡眠薬を服用すると「ふらつき」や「転倒」をすることがあり、特に高齢者の場合は骨折の注意も必要です。そんな中、最近市場に出た“ふらつきや転倒が少ない”とされる新しいタイプの睡眠薬に注目が集まっています。今回の、もりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、従来型の中でふらつきが少ないとされる薬と新タイプの薬とを比較した研究を紹介しています。
新しいタイプの睡眠薬と従来型睡眠薬の比較
睡眠に使用される薬剤には様々なタイプのものが存在します。今回は下記1と2を比較した研究をご紹介します。
- ふらつきや転倒が少ないと言われている新しいタイプの睡眠薬(ここでは、スボレキサント)
- 従来型睡眠薬の中では比較的ふらつきや転倒が少ないと言われている「準」従来型睡眠薬であるZドラッグ(名称の綴りにZが入ることから名付けられたグループ名。ゾピクロン、エスゾピクロン、ゾルピデム)
スボレキサントとZドラッグに関する骨折リスクの比較
日本のlongevity improvement and fair evidence (LIFE) studyのデータベースを用いた研究であり、65歳以上のスボレキサント(16,148人)か、Zドラックを始めた人(54,327人)を対象としています。
上記の対象者における入院を必要とする骨折が起こる割合を30日、60日、90日の期間で比較しました。結果として、以下の内容が示されました。
- 30日間の比較で、スボレキサント vs Zドラックの危険性の割合(ハザード比)は、大腿骨頚部骨折1.01倍、全ての骨折1.03倍となっており、明確な差異はありませんでした。
- 観察期間を60日、90日と延長しても同様で、差異は明らかではありませんでした。
要約:『骨折のリスクを比較したところ、スボレキサントとZドラッグで明らかな差異はないかもしれない』
違う指標を用いた時には、スボレキサントのメリットが明らかになることもあるかもしれませんが、今回の「入院が必要な骨折」という視点からは差異ははっきりしませんでした。
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