立憲の腰砕け。野党第一党が聞いて呆れる「岸田軍拡」擦り寄り姿勢の醜態

 

他国へのミサイル攻撃を容認するかの姿勢を示す立憲民主党

とりわけ問題なのは、野党第一党=立憲民主党が、他国領域へのミサイル攻撃を容認するかの姿勢を示していることである。同党の外務・安保戦略PTは22年12月20日に、政府・与党の安保3文書の閣議決定を受けてそれに対する見解「外交安保戦略の方向性」を打ち出した。この日の会合には、いわゆる左派系の議員も多く押しかけて大いに議論を仕掛け文言の修正を図ったと聞いているが、出来上がったものを読むと、びっくり仰天せざるを得ない。

まず、自民党が「敵基地攻撃能力」を途中から「反撃能力」と言い換えるようになったのは、敵基地攻撃能力では「先制」攻撃をするかの印象を与えるのを避けるためだったが、野党としてはこのような言葉遊びによる本質隠しを暴き、実際には「敵基地先制攻撃能力」であることを正しく指摘することから議論を始めなければならない。が、同党は「反撃能力」の言葉を当然であるかに認めてしまっている。これが《腰砕けその1》である。

次に、「反撃能力の行使は専守防衛を逸脱する可能性があるので賛同できない」と言っている。これを正しい日本語で書けば「反撃能力の行使はもちろん保有も専守防衛を逸脱するので反対する」となるはずである。「反撃能力の行使は」という言い方は「保有するのは仕方がない」という前提に立ってその「行使」の仕方だけを問題にしているように聞こえる《腰砕けその2》。

さらに、「専守防衛を逸脱する可能性があるので」というのは特に欺瞞に満ちた文章で、これでは「反撃能力の行使に専守防衛を逸脱する可能性がある場合とそうでない場合とがあるので、前者の場合は賛同できないが、後者の場合は賛同する」という意味になる《腰砕けその3》。

島嶼防衛のためならば必要のないミサイルの長距離化

文書はまた、「一方で、……我が国島嶼部などへの軍事的侵攻を抑止し、排除するためのミサイルの長射程化などミサイル能力の向上は必要である」と言っている。自民党が「ミサイル能力の長射程化」を目論んでいるのは、次項でも明らかなように、「敵基地」を含む「他国領域」をミサイル攻撃したいがためである。それに対してこの文書は、「島嶼部への侵攻を抑止し排除する」、すなわち専守防衛的な使い方のためであればミサイル能力の長距離化は賛成だと言っている。しかし、島嶼防衛のためであればミサイルの長距離化は特に必要がない。この訳の分からぬ文章は、専守防衛のためと称してミサイル能力の長距離化を図ろうとする自民党の誤魔化しに寄り添っているだけである《腰砕けその4》。

それに続くのは「しかし、他国領域へのミサイル打撃力の保有については、それが政策的な必要性と合理性を満たし、憲法に基づく専守防衛と適合するものでなければならない」というものである。これも以上と同じ虚偽レトリックで、「他国領域へのミサイル打撃力の保有」には、「政策的な必要性と合理性を満たし、憲法に基づく専守防衛と適合するもの」とそうでないものとがあり、前者には反対するが、後者には賛成するという意味である。「専守防衛と適合する他国領域へのミサイル攻撃」などというものがあるとすればどういうものなのか、是非とも教えていただきたいものである《腰砕けその5》。

これはもう、腰痛でも深刻な腰椎多重変性すべり症を患っているような有様である。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 立憲の腰砕け。野党第一党が聞いて呆れる「岸田軍拡」擦り寄り姿勢の醜態
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け